遺産漏れが発覚した場合、遺産分割協議は無効になるか?

問題提起

遺産分割協議が成立した後、一部の遺産が漏れていることが発覚した場合、協議をやり直すことはできるのでしょうか。

法律的には、協議が錯誤により無効だということになれば、一からやり直すことができるため、錯誤無効といえるかどうかが問題となります。

 

事案の概要

本件は、母が遺言を残さず死亡し、相続人である長男・長女・二男の3人が、遺産分割協議を行い、成立に至り、その後、それを前提に、母より先に死亡していた父の遺産の一部について、再度、分割協議が行われた事案です。

2つの遺産分割が成立した後、長男及び長女が母名義の預貯金や株式を調査したところ、二男が母の死亡前後に母の預貯金合計4330万円を引き出していた事実や、母が遺産分割協議書に記載されていない株式(計6社)を有していた事実が判明しました。

長男及び長女は、この裁判より前の裁判で、このことを理由に、第1回目の遺産分割は錯誤で無効だと主張したところ、主張が認められました(東京地裁平成23年12月27日判決)。それに基づき、長男及び長女が、二男に対し、第2回目の遺産分割協議の無効と、不当に取得した母の財産の返還を求めたのが本件です。

 

本判決

「原告らは、母が死亡当時保有していた全ての預貯金及び株式の内容を知らないまま、被告が文面を作成した別件遺産分割協議書(第1回目の遺産分割協議の協議書のことです。)にはそのほとんどが記載されているものと信じて、これに署名捺印したものというべきであり、別件訴訟(最初の訴訟のことをいいます。)において認定されたとおり、そのことは、被告との間においても当然の前提となっていたというべきであるから、別件遺産分割協議に係る原告らの意思表示には要素の錯誤があり、無効であるということができる。

そうだとすると、その後間もなくしてされた本件遺産分割協議(第2回目の遺産分割協議のことです。)の際にも、別件遺産分割協議と同様の錯誤があったというべきであるから、本件遺産分割協議に係る原告らの意思表示には要素の錯誤があり、本件遺産分割協議は無効である。」としました。

そして、二男が勝手に取得していた母の遺産(預貯金、株式配当金、所有不動産の賃料等)について、その相続分に応じ、長男及び長女から二男に対する不当利得返還請求を認めました。

 

この裁判例のポイント

遺産が漏れていた遺産分割協議につき、漏れがないことが他の相続人の前提であったことを理由に、錯誤無効を認めた点が最大のポイントです。

しかし、本件は、漏れていた遺産が多額であることや、遺産のうち不動産が第三者に譲渡されていなかった事案であるため、事実上、これらの点が考慮され、無効と判断された可能性が高いです。すなわち、漏れていた遺産が少額である事案や、遺産が多額であっても、協議成立後に遺産の一部が第三者に譲渡されている事案では、無効と判断されるとは限らないでしょう。この点、今後の裁判例に注意しておく必要があると思われます。

(東京地裁平成27年4月22日判決をもとに作成)

 

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