神戸・姫路の弁護士による相続相談弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ(兵庫県弁護士会所属)神戸駅1分/姫路駅1分

空き家問題と相続

1.空き家の増加

廃墟昨今、空き家の増加が社会問題となっています。

統計的にみても、平成25年時点で、空き家総数は約820万戸、そのうち、適切に管理されていない空き家は約319万戸、さらにそのうち腐食・破損がある空き家は約105万戸あります。 

兵庫県内においても適切に管理されていない空き家は14万7700戸(住宅総数の約5.4%を占める。)、神戸市内においても適切に管理されていない空き家は3万7160戸(住宅総数の約4.5%を占める)あるといわれており、その問題の大きさがわかります。

2.空き家増加の背景

空き家増加の背景としては、1960年から70年まで人口増加とマイホームブームで、都市郊外に住宅が急増したものの、1990年代終期から不況や、核家族化、人口減により空き家が増加したことがあげられます。 

また、空き家化の原因としては、空き家を相続したものの、相続人が遠方に居住しているため、適切な管理を維持するのが困難になっているケースが多くあります。

さらに、そのような所有者は、

①空き家の利用予定がなく、今後の対応が分からない
②解体費用の支出が困難
③売り手・貸し手が見つからない
④更地にすることで固定資産税が増加する、

などの悩みを抱えており、早期の対処ができていないのが現状です。

④の固定資産税の問題を具体的に説明すると、住宅用地の特例措置の適用があれば、住宅用地に対する固定資産税が最大6分の1に減額、都市計画税も最大3分の1に減額されます。ところが、空き家を解体すると、特例措置を受けられなくなるので、固定資産税が増額されます。

そこで、解体費用をかけ、さらに固定資産税が増額されるのであれば、空き家を放置していた方が経済的ということです。

3.空き家増加による問題点

 空き家が増加すると、次のような問題が生じ得ます。

①建物の老朽化による倒壊の危険

自然災害等によって倒壊し周囲の人・物に危害を与えるおそれがあります。
万一、そのようなことが起きた場合、空き家の所有者は、工作物責任(民法717条)を負うことになります。

②防犯・防災上の問題の発生

不審者の建物進入による治安悪化(不審者のたまり場になり、犯罪の温床になるおそれ)のおそれがあり、放火による火災の発生等(空き家による放火で、平成22年に東京都港区で住宅・店舗13棟が全焼する火事があった。)も起きています。

③衛生上の問題の発生

ごみの不法投棄等による衛生問題(異臭・・・)が発生するおそれがあり、具体的には、野良猫やネズミの繁殖、害虫の発生が起こり得ます。

④景観の悪化周辺不動産の価値下落の派生 

樹木等が伸び放題、落書き等による見栄えの悪化等、危険家屋が増加することで、周辺地域のイメージが低下し(住環境劣化)、周辺不動産の資産価値の下落を招くおそれがあります。

4.自治体の従来の空き家対策

⑴ 従来の問題点

市民・議員から市町村長に、苦情・要請あっても、

①倒壊危険空き家を予防的に撤去できる法令がなかった
②所有者不明の空き家に対して、権限を行使できなかった

など、自治体の対応には限界がありました。

⑵ 各自治体で空き家条例を制定したが、

①所有者等の了解を得なければ、家屋内への立ち入り調査ができない
②所有者等が判明しない場合、固定資産税情報を利用できない
③所有者等が判明しない場合、行政代執行により除去できない

など、実効性に問題がありました。

⑶ そこで、自治体から、国が空き家に関する法を制定してほしいとの要望を受け、空家対策特別措置法(以下「空家法」という。)が、平成27年5月26日に施行されました。

空家対策特別措置法の概要については、別途ご説明したいと思います。

5.相続人の対策

空き家に対して、相続人としては次のような対策が考えられます。

換価分割

空き家を管理する意思がある相続人がいない場合、相続人全員で第三者に売却し、売買代金を分配する方法です。

この場合、空き家の財産価値が減少しないように、早期の売却を検討されるとよいでしょう。

代償分割

空き家を管理する意思のある相続人が、その他の相続人に代償金を支払う代わりに、空き家を取得してもらう(代償分割する)。

空家を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除の特例(平成28年度税制改正)

ア 被相続人のみが居住していた家屋・敷地を、相続人が、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した場合に、譲渡所得から3000万円が控除される制度が創設されました。
その結果、相続人が、被相続人の居住用財産を譲渡しやすくなりました。

イ ポイント

上記特例の適用が認められるには、次の要件が必要となります。

①相続により空き家になったこと
②昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
③相続から3年を経過する日の属する12月31日までに譲渡すること
④要件を満たす証明書が発行されていること、など

 ウ  対象不動産の購入が古い場合、購入金額を示す資料が存在せず、思わぬ高額の譲渡所得税が発生する可能性があります。そのような場合にも、上記特例の適用が認められれば、相続人の経済的負担は相当程度軽減されます。

空き家問題と相続の件でお困りの方は、一度専門家にご相談されることをお勧めします。