補充遺言

1.遺産を相続させる予定の推定相続人が遺言者よりも先に死亡した場合の問題点

 遺産を相続させる予定の推定相続人が遺言者よりも先に死亡した場合、遺産の分け方にどのような影響が生じるのでしょうか。

 たとえば、遺言者Aが、子3人(B,C,D)のうち、全財産を子のBに相続させる旨の遺言書を作成していたとします。ところが、Aが死亡する1週間前に、子のBが、Aよりも先にお亡くなりになりました。Bには2人の子(E,F)がおり、E,FはBを代襲するAの代襲相続人の立場にあります。
 
 このような場合、E,Fは、BがAの全財産を相続するところ、自分たちがその代襲相続人として、Aの全財産を相続するはずであると主張することが考えられます。これに対して、C,Dは、全財産を相続させると遺言されたBが死亡したのだから、すでにこの遺言は効力が無くなったのであり、遺言はないものとして、C,Dは法定相続分である3分の1を主張することが考えられるのです。

2.判例の立場

 では、このような場合、裁判所はどのように考えるのでしょうか。
この点、最高裁平成23年2月22日第三小法廷は、次のとおり判断しました。
 
「遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される。したがって、上記のような『相続させる』旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言書の死亡以前に死亡した場合には、当該『相続させる』旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況等から、遺言者が、上記の場合には、推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」

3.具体的な対応方法

 上記最高裁判例の立場からもおわかりのとおり、遺産を相続させる予定の推定相続人が遺言者よりも先に死亡した場合、その遺言は原則として無効となります。

 従いまして、遺言書を作成するときには、次の点にご留意ください。
まず、①遺産を相続させる予定の推定相続人が遺言者よりも先に死亡した場合、その遺産の分け方について、遺言者のお考えを整理しておかれるとよいでしょう。

 次に、②推定相続人が先に死亡した場合、その遺言は死亡した推定相続人の代襲相続人に当然に引き継がれるわけではないので、その代襲相続人に引き継がせたいときには、「万一、BがAよりも先に死亡した場合には、Bの相続人にAの全財産を相続させる」旨(補充遺言)も遺言書に明記しておくようにしてください。

 遺言書の作成についてお考えの方は、相続の分野に詳しい専門家にご相談されることをお勧めします。  

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