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特別寄与料

1 特別寄与料とは?

特別寄与料とは,相続人でない親族(相続人の妻など)が,被相続人に対して療養看護等をして被相続人の財産の維持・増加に貢献をした場合に,被相続人の死亡後,相続人に対し,その貢献度合いに応じて請求できる金銭のことです。相続人が療養看護等の貢献をした場合は,「寄与分」として遺産分割手続内で考慮されますが,相続人でない場合は,「特別寄与料」として,別途請求することになります。

相続法改正により,令和元年7月以降導入された制度です。

 

2 特別寄与料の要件

特別寄与料の要件は,以下の4つです。

 (1)被相続人の親族であること(ただし,相続人,相続人欠格事由に該当する者,廃除された者を除く)

親族か否かは,相続時を基準として判断されます。たとえば,相続人の妻が被相続人の療養看護をしていても,相続時(=被相続人の死亡時)までに離婚してしまうと,特別寄与料を請求できないことになります。

また,事実婚や同性カップルのパートナーは含まれないことになっています。

 

(2)被相続人に対して,無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと

「労務の提供」でなければならないので,介護費を負担していたなどの財産上の給付では,この要件を充たしません。

「無償」であるか否かは,個別の事情に応じて判断することになります。たとえば,被相続人が療養監護者の生活費を負担していた場合でも,療養看護前から被相続人が生活費を負担していたのであれば,療養看護の対価として生活費を支払っていたとはいえないため,「無償」の要件を充たす可能性があります。

 

(3)(2)により,被相続人の財産が維持または増加したこと

財産上の効果が生じていることが必要なので,精神的な援助にとどまる場合は,この要件を充たしません。

 

(4)特別の寄与をしたこと

どの程度の寄与があれば「特別の寄与」といえるかについて,明確な基準はなく,今後の裁判例を注視していく必要があります。しかし,類似制度である「寄与分」についての裁判例を見る限り,「特別の寄与」といえるためのハードルはかなり高いと考えられます。

 

3 請求方法

特別寄与料は,相続人の全員又は一部を選んで請求します。ただし,相続人1人に対して請求できる金額は,特別寄与料の総額に,その相続人の相続分を掛けた額にとどまります。

まずは当事者間で協議を行い,話がまとまらなければ,家庭裁判所に対して調停や審判を申し立てることになります。遺産分割とは別個の手続ですので,特別寄与者が遺産分割手続に参加していくわけではありません。

 

4 注意点

特別寄与料についての協議がまとまらなかった場合,家庭裁判所に対して調停や審判を申し立てることになりますが,この申立ては,特別寄与者が相続の開始を知った時から6か月以内,かつ相続開始のときから1年以内,にしなければなりません。特別の寄与といえるほど療養看護をしていたのであれば,相続の開始(=被相続人の死亡)も知っているでしょうから,実際は,被相続人が亡くなってから6か月以内に申し立てなければならないことになります。

「もしかすると特別寄与料を請求できるかもしれない」とお思いの方は,ぜひ早急に,相続問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。