建物の相続税の評価額

1 はじめに

 相続の際には、多額の税金がかかることがあります。自分が相続でどのくらいの財産を取得できるかについては、相続人と相続財産の内容を確定させるだけでは足りず、税金にも目を向けなければなりません。
 この記事では、「建物」の相続税評価額の計算方法について解説していきます。

 

2 相続税評価額の計算方法

 建物の相続税の計算方法は、その建物を①故人が自宅として利用していたのか、②(一軒家を)他人に賃貸していたのか、③賃貸アパートとしていたのかで異なります。

⑴ 故人が自宅として利用していた場合

 自宅として利用していた場合の相続税評価額は、固定資産税評価額に1.0をかけた額、すなわち固定資産税評価額と同じになっています。

自宅の相続税評価額=固定資産税評価額×1

 

⑵ 第三者に一軒家を貸していた場合

ア 計算方法

 他人に賃貸している家屋は、自宅用の家屋よりも制約が大きく、より流動性が低いため、借地権の評価分を固定資産税評価額から差し引くことができます。借地権割合は現在、全国一律で30%と定められています。
 すなわち、賃貸していた場合の相続税評価額は以下の通りになります。

賃貸家屋の相続税評価額=固定資産税評価額×(1―0.3)

イ 賃貸借と認められない場合

 親族間で家屋を無償で貸している場合や、相場よりも著しく安い家賃を受け取っている場合には、賃貸借とは認められず、相続税評価額を下げることはできません。

⑶ 賃貸アパートの相続税評価額

ア 計算方法

 賃貸アパートとして貸し出されている場合、借地権割合を差し引くことができるのは賃貸されている部分だけで、借り手がついていない部分については借地権割合を差し引くことはできません。賃貸されている部分(賃貸割合)は、入居率ではなく、貸している部分の床面積の割合で計算します。貸している部分の床面積が広いほど、評価額が下がります。
相続税評価額は以下の通りになります。

賃貸アパートの相続税評価額=固定資産税評価額×(1―0.3×賃貸割合)

 例えば、200㎡の賃貸アパートのうち、入居者のいる部分が100㎡の場合、差し引くことができる借地権割合は30%×0.5の15%となります。そのため、そのアパートの相続税評価額は、固定資産税評価額に0.85(1―0.15)をかけた金額になります。

イ 一時的な空室がある場合の処理

 一時的に空室になっている場合は、その部分の床面積を実際に賃貸されている部分の床面積に加えて算定することができます。
 では、一時的に空室といえるのはどのような場合でしょうか。
 一時的な空室であるかは、①各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか、②賃借人の退去後、速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか、③空室の期間、ほかの用途に供されていないかどうか、④空室の期間が課税時期の前後の例えば一か月程度であるなど一時的な期間であったかどうか、⑤課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうかなどを考慮して総合的に判断されます。

 

3 固定資産税評価額の確認方法

 固定資産税評価額が相続税評価額の計算に必要であることが分かったと思います。それでは、固定資産税評価額はどのようにして確認できるのでしょうか。
 固定資産税評価額は、不動産の所有者に毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に付いてくる「課税明細書」に書かれています。そのほかにも、市町村の役場で固定資産税評価証明書を取得したり、固定資産課税台帳を閲覧する方法でも確認することができます。

 

4 おわりに

 相続税評価額の計算方法は以上のような方法で計算することができます。相続税を少しでも抑えるには、賃貸アパートの空室を減らしたり、適切な額の賃料を支払ってもらって一軒家を賃貸することが有効な手段になるでしょう。
 相続の際には、財産をただ分配するだけではなく、相続税の負担額についても考えながら遺産分割協議に臨むことが必要です。
 相続にお困りの際には、相続の分野に強い弁護士に相談するのがよいでしょう。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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