相続税の申告と納付・計算について

1 はじめに

 相続税の申告・納付が必要な場合に、その期限に遅れてしてしまうと、無申告課税や延滞税を賦課されるなどの不利益を受けてしまいますので、注意が必要です。
 以下では、相続税の申告・納付義務を負うのはどのような場合か、発生する場合の税額はどのように計算するのかといった点を解説していきます。

 

2 相続税の申告・納付義務

(1)相続税とは

 被相続人が死亡して相続が開始すると、遺産が相続人等(相続人、受遺者、死因受贈者)の自然人(個人)に承継されますが、これにより遺産を取得した個人に課される税金が、相続税です。遺贈や死因贈与を受けた法人については、相続税ではなく法人税が問題となります。

(2)相続税の申告・納付が必要となる場合

 相続税は、遺産の額に応じて税の総額が決定され、遺産を取得した者それぞれに対して、その取得割合に応じて割り付けられることになります。
 遺産の額を定めるにあたっては、積極財産と債務のいずれについても、相続・遺贈・贈与による「取得の時」の時価で評価されます。ここでいう「取得の時」とは、遺産分割時ではなく、相続開始時のことです。
 平成27年の法改正により、相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数(ただし、養子については、実子がある場合は1人まで、実子がない場合も2人まで)」へと大幅に引き下げられており、遺産の額がこれを超える場合、相続人等は相続税の申告・納付をしなければなりません。

(3)申告・納付の期限

 相続税の申告期限・納付期限は、いずれも相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
 相続人等の間で遺産分割がまとまらない等のために、遺産の取得者が確定していない場合でも、10か月の申告・納付期限を延長することはできません。このような場合には、申告義務を負っている者が、いったんは各自で法定相続分どおりに申告・納税したうえで、遺産分割等が決着した後に、修正申告、更正の請求で是正を図ることになります。

(4)納付の方法

 相続税は、金銭による一括納付が原則とされています。遺産全体の額が大きい一方で、現金や預金の額が少ない場合には、相続した遺産によって相続税を納付することが困難な場合もあります。

(5)期限までに申告・納付がなされなかった場合

ア 無申告課税・延滞税

 期限までに申告しなかったことに対しては無申告課税が、期限までに納付しなかったことに対しては延滞税が課されることになります。すなわち、期限までに申告しなかった場合には、(当然納付もしていないことになりますので)無申告税と延滞税の双方が賦課されることになります。
 無申告課税は、納付すべき税額に一定の税率(原則として15%または20%)をかけた額とされます。延滞税は、納付を遅滞している日数に応じて額が決まりますので、納付が遅れれば遅れるほど税額も増えることになります。

イ 連帯納付義務

 相続人等には相続税の連帯納付義務が課されており、相続人の1人が期限を過ぎても相続税を納付しない場合には、他の相続人等に対して、相続税が納付されていない旨の通知がなされます。他の相続人等は、滞納している相続人等に代わって相続税を納付しなければなりません。

ウ 滞納処分

 相続税を滞納したままにしていると、最終的には、滞納者に対して滞納処分と呼ばれる手続がとられ、滞納者の財産が差押え等を受けることになります。

 

3 相続税額の計算

(1)相続税申告の対象財産

 不動産、現金、預貯金、有価証券といった相続財産が対象になります。また、相続人が受取人となっている生命保険金や死亡退職金についても、控除額(相続人の頭数に500万円を掛けた額)を超える額について相続財産とみなされるため、対象財産とされます。
 これに対して、墓地や仏壇などのいわゆる祭祀財産については、遺産ではなく、相続税の課税対象でもないとされています。

(2)対象財産の評価

 相続税の計算するためには、対象財産を評価する必要があります。

ア 不動産

 土地については、通常は路線価や固定資産評価額を基礎に、建物ついては固定資産評価額に一定の倍率を掛けた額を基礎に評価します。

イ 有価証券

 上場株式は、死亡日における終値の株価で評価するのが通常です。非上場株式は、いくつかの評価方法を使い分けることになりますが、いわゆる小会社については、原則として純資産価額方式(会社の保有資産から債務や法人税を控除した残額を発行株式で割って株価を評価する方法)を用いることになります。

(3)負債・葬儀費用の控除

 負債や葬儀費用については、遺産総額から控除されます。

(4)相続人それぞれの税額

 以上により遺産総額を計算したうえで、遺産分割によって相続人それぞれが取得する財産の額を計算します。
 そして、相続人のそれぞれが取得する財産額に、相続税法上定められた税率を掛け合わせることで、相続人それぞれの相続税額を算出することができます。

 

4 最後に

 相続税の申告・納付が必要になる場合には、早急に相続人や遺産を把握して、税額を計算し、申告・納付を行う必要があります。特に相続手続が円滑に進んでいない場合には、全体的な対処の方針を考えるにあたり、法律面での専門的な知見が必要になる場面も少なくありません。
 もし、「相続税を申告・納付しなければならないが、相続手続が進んでいない」といったことでお困りなら、相続に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

 

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弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ

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