神戸・姫路の弁護士による相続相談弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ(兵庫県弁護士会所属)神戸駅1分/姫路駅1分

特別受益の証拠

1  はじめに

 一部の相続人が、生前贈与を受けていたにもかかわらず、贈与の事実を認めないケースが多くあります。そのような場合には、特別受益の持ち戻しを主張する相続人が、その相続人が生前贈与を受けた事実や、その金額について立証する必要があります。以下では、財産ごとの特別受益の証拠や、証拠があっても特別受益とは認められない場合について、説明していきます。

2  預貯金の贈与

 一部の相続人が、被相続人の預貯金について贈与を受けていたことを立証する方法としては、被相続人の預貯金口座の取引履歴を取得することが考えられます。
 判例において、「相続人は、被相続人名義の預貯金口座の取引履歴について、他の共同相続人全員の同意がない場合であっても、開示請求することができる(最高裁平成21年1月22日)」とされており、相続人が単独で取引履歴を取得することができます。
 もっとも、「相続人の一人が、被相続人の預貯金口座を解約していた場合には、過去の預金契約について、預金契約締結中と同内容の取引経過開示義務を負わない」とした裁判例(東京高判平成23年8月3日)があるため、このような場合には、取引履歴の開示に応じてもらえない可能性があります。
 この取引履歴の具体的な入手方法としては、必要書類を持参のうえ、金融機関で発行依頼をすることによって取得できます。

 【必要書類の例】
・被相続人の戸籍謄本
・請求者の戸籍謄本
・請求者の実印及び印鑑証明書
・被相続人の取引内容を証明できるもの(通帳・キャッシュカード等)

 もっとも、金融機関では、取引履歴の保管期間を10年とされていることが多いため、それ以前の送金履歴を取得できない可能性があります。
 また、被相続人が預貯金口座から直接送金したのではなく、預貯金を引き出したうえで、現金を手渡していた場合は、立証が難しいといえます。この場合は、被相続人の口座から高額な出金がされていたのと同時期に、相続人の預貯金口座に高額な入金があった場合や、相続人名義の不動産、自動車等が購入されていた場合には、被相続人から贈与を受けていたことを推認させる事情となります。

3  不動産の贈与

 不動産が生前贈与されていたことを立証するための証拠としては、登記事項証明書や、贈与契約書が考えられます。
 登記事項証明書には、現在の所有者、不動産の取得日・取得原因(贈与、売買等)だけでなく、前の所有者なども記載されています。
 そのため、登記事項証明書に、被相続人と相続人の名前が記載され、取得原因に「贈与」等が記載されていれば、その不動産については、特別受益として認められる可能性が高いといえます。
 他方で、「贈与」との記載がない場合であっても、相続人が不動産を購入した日の記載があり、同日付で、被相続人が大金を出金していた場合には、不動産の購入資金を渡していたことを推認させる証拠となりえます。

4  車の贈与

 車が贈与されたことの証拠としては、登録事項等証明書や、贈与契約書が挙げられます。
 自動車の登録事項等証明書には、移転登録の時期や、前の所有者の氏名等が記載されているため、被相続人の生前に、被相続人から相続人へ移転登録されていた場合等には、車を贈与したことを立証するための重要な証拠となります。

5  証拠によっても特別受益と認められない場合

(1)  持ち戻し免除の意思表示があった場合

 上記のような証拠があったとしても、被相続人が、生前に持ち戻し免除の意思表示を行っていた場合には、特別受益に含めることができません。
 持ち戻し免除の意思表示とは、遺言書や生前贈与の契約書などにより、被相続人が特別受益を遺産分割の対象から外すように、相続人に意思表示をすることをいいます。

(2)  婚姻期間20年経った後に贈与した自宅の場合

 平成30年の法改正により、婚姻期間20年以上の夫婦の一方が、他方に対して、居住用の不動産を遺贈又は贈与したときは、持ち戻し免除の意思表示がなされたものと推定され、特別受益にあたらないことが定められました(民法903条4項)。
 したがって、こうした持ち戻し免除の意思表示の推定を覆すような証拠がない限り、特別受益とは認められません。

6  まとめ

 以上のとおり、一部の相続人が、生前贈与の事実を認めない場合には、贈与の事実を立証する必要がありますが、昔の贈与であればあるほど、証拠収集が難しくなり、特別受益に含まれない場合もあります。「生前贈与の証拠が見当たらない」、「証拠収集をしてほしい」と思われた方は、是非弁護士にご相談ください。