自筆証書遺言の書き方
1 遺言は方式が決まっている!
遺言は、要式行為です。つまり、法律の定める方式に従って作成しなければなりません(民法960条)。
2 自筆証書遺言の方式
(1)遺言者が手書きすること
「自筆」証書遺言というくらいですから、遺言者は、原則として遺言書のすべてを自分で手書き(自書)しなければなりません。
ただし、相続法改正により、2019年1月13日以降、財産目録については自書でなくともよいということになりました。すなわち、財産目録については、パソコン等によって作成したものを印刷したうえで、その財産目録の各頁(両面印刷の場合は両面)に遺言者が署名押印をすれば、自書でなくてもよいということです。
(2)作成日付を正確に記載すること
遺言書には、作成した日付も正確に自書しなければなりません。
この点について、作成日付を「10月吉日」のように記載している遺言書をときどき見かけます。しかし、これでは作成日付がいつなのかわからないため、無効と判断されます(最判昭和54年5月31日民集33巻4号445頁)。
(3)遺言者が署名押印すること
遺言書には、遺言者が署名押印しなければなりません。
この署名押印は、(1)でご説明した財産目録への署名押印とは別物です。財産目録に署名押印したからといって油断し、遺言書本体の方に署名押印するのを忘れないでください。
3 その他の注意事項
(1)遺留分に注意
相続人には、遺留分という最低限の取り分が認められています。そして、遺言をしたとしても、廃除という手続を取らない限り、相続人の遺留分を侵害することはできません。つまり、遺留分を侵害する遺言書を書いてしまうと、遺言書どおりの結果にならない可能性があるのです。また、遺言者の死後、遺留分を巡って相続人同士の紛争が長期化することもあります。
(2)相続人が先に亡くなる可能性
「長男に土地を相続させるという遺言書を書いたけれども、不慮の事故で自分よりも先に長男が亡くなった」というように、遺言者よりも先に相続人が亡くなってしまうケースもよくあります。この場合、遺言書は原則として失効し、せっかく書いた遺言書が無意味になりかねません。このような事態を避けるため、相続人が先に亡くなった場合も想定した遺言書にしておくと完璧です。
(3)遺言書が複数枚にわたる場合には割印(契印)を
遺言書が2枚以上になる場合、自分が書いていない紙を挿入される危険を防ぐため、割印(契印)をしておくと安心です。割印(契印)に使う印鑑は、遺言書に押印した印鑑と同じものを押すようにしてください。
4 不安に思われた方へ
このように、自筆証書遺言には様々なルール(方式)や注意点があります。「自分ひとりで遺言を作成できる自信がない」という方や、「遺言を書いてみたけれどこれで問題ないか不安だ」という方は、この分野に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。