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相続人が認知症のときの遺産分割

緑×家×虹

第1 相続人が認知症のときの遺産分割

1 遺産分割協議が無効になる

 相続人中に認知症の方がいる場合、その相続人には意思能力がなければ、その遺産分割協議は無効となります。
 法律行為を行うためには意思能力が必要となり、意思能力を有しない者がした法律行為は無効となるためです(民法3条の2)。 
 認知症の場合には、症状の度合いにもよりますが、判断能力が著しく低下し、自らの行為の損得について判断できないことが多いと思われます。このため、認知症の方が遺産分割協議を行っても、それは後になって無効と判断される可能性が高くなります

2 成年後見人を選任する

 この場合の対処法としては1つだけで、それは成年後見制度を利用することです。
 具体的には、家庭裁判所に成年後見人の選任申立てを行います。申立てにあたっては、主治医による診断書(成年後見申立て用のもの)等の書類が必要となります。
 最高裁判所のホームページに申立書の書式例が記載されています。

 後見開始の申立書 | 裁判所 (courts.go.jp)

 成年後見人は、本人の法定代理人として、本人の財産管理権を有します(民法859条1項)。
 このため、成年後見人が本人の代理人として遺産分割協議に参加し、本人に代わって協議することで、有効な遺産分割協議をすることができます。
 なお、裁判所が成年後見人等を選任するまでには数か月程度の時間を要するため、時間に余裕をもって申立手続を行うことをおすすめします。

第2 事前の対策

1 成年後見制度のデメリット

 一度成年後見人等が選任されると、本人が亡くなるまで成年後見制度が続くため、遺産分割協議が終わっても、成年後見人が本人の財産を管理することになります。
 成年後見人が財産を管理するので、その管理方針が、ときに家族の希望に沿わないことがあります。
 弁護士や司法書士等の専門家が成年後見人になった場合には、本人の財産から、成年後見人等に対して報酬を支払う必要があります。

2 遺言作成のすすめ

 このような場合に備え、遺言書を作成しておくことが非常に有効です。
 遺言書を作成しておけば、相続財産は、その遺言通りに分けることになるため、遺産分割協議を行う必要がなくなります
 このため、成年後見制度を利用せずとも、認知症の相続人がいるという問題をクリアすることができます。
 配偶者がいて、夫婦ともに高齢になってきたというなときは、ぜひ夫婦そろって遺言書を作成することをご検討ください。

 このとき、遺言書で、遺言執行者を指定しておきましょう
 遺言執行者とは、遺言内容を実現するために相続手続を行う者です。これは弁護士でなくても相続人の一人に指定することができます。
 遺言執行者を指定しておかなければ、結局相続人全員で遺言内容を実現する手続を行わなければなりませんが、認知症の相続人がいる場合には、これができないのです。
 せっかく作成した遺言が無意味とならないよう、遺言執行者の指定は忘れないようにしましょう。

 

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