寄与分の算定方法について
第1 寄与分が認められ得る具体的なケース
寄与分が認められる可能性がある具体的なケースは、以下のようなものです。
【寄与行為の具体例】 ①家業に従事していた場合 ②金銭等を出資していた場合 ③被相続人の療養看護に従事していた場合 ④被相続人を扶養していた場合 |
このような寄与行為がある場合、寄与分はどのように算定するのでしょうか。
第2 家業に従事していた場合
1 要件
相続人が家業に従事していた場合に、寄与分が認められるためには、以下のような事情が必要です。 なお、家業とは、農業、林業、水産業、同族経営の会社の業務、製造業、加工業、病院など、被相続人が行っていた事業のことをいいます。
【家事従事型の寄与分が認められるための要件】 ①特別の寄与があること・・・寄与行為が被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える特別の寄与であること ②無償性・・・無償またはこれに近い状態であったこと ③継続性…労務の提供が一定の期間以上に及んでいること(数年程度) ④専従性・・・専従的またはそれに近い状態で行っていたこと ⑤寄与行為の結果として、相続財産が維持または増加していること(因果関係) |
例えば、相続人が被相続人の経営する会社で長年働き、無給または著しく低い給料しかもらっていなかったような場合、その相続人の寄与分は、以下のように算出することが可能です。
2 寄与分の算出方法の例
【家業従事型・計算式】 =通常得られたであろう報酬の金額×(1-生活費の控除割合)×寄与期間 |
このような場合、家業に従事してきた相続人が通常得られたであろう報酬の金額に、寄与期間を乗じて寄与分を算出します。ただし、このような場合、その相続人は家業収入で生活の面倒を見てもらっているはずであることから、その生活費に相当する分は控除します。
従事する家業の内容によっては、相続人の報酬というものを想定しにくい場合がありますので、そのような場合は、相続財産の総額にその相続人が財産形成に貢献した割合を乗じて算出する方法も考えられます。
第3 金銭等を出資していた場合
1 要件
例えば、被相続人が不動産取得する際に相続人が資金を提供した場合、増改築やリフォームの資金を提供した場合、被相続人の借金返済のための資金を出したような場合がこれに当たります。
このような金銭等を出資していた場合、寄与分が認められるための要件は、以下のとおりです。
【金銭出資型において寄与分が認められるための要件】 |
2 寄与分算出方法の例
【金銭出資型・計算式】 =贈与金額 ×貨幣価値変動率 ×裁量割合 |
例えば、被相続人に金銭を給付した場合、その金銭を相続開始時(死亡時)における貨幣価値に換算します。例えば、当時1000万円を被相続人に渡したが、相続開始時(死亡時)で考えるとその価値が1億円であるというような場合は1億円と考えるのです。ただ、給付した金銭全額が寄与分として認められるという訳ではなく、「裁量割合」を乗じて、個別の事情ごとに寄与分が判断されることになります。この裁量割合については、30%、50%などと一定の割合が決まっている訳ではなく、事案ごとに判断されます。
第4 被相続人の療養看護をしていた場合
1 要件
例えば、病気療養中の被相続人について、本来であればヘルパーや看護人を雇わなければならなかったはずなのに、相続人が療養看護をしたために、その費用の支出を免れたといったような場合です。
【療養看護型の寄与分が認められるための要件】 ①被相続人について療養看護が必要な病状であったこと ②特別の貢献・・・被相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献であったこと ③無償性…無償またはこれに近い状態でなされていること ④継続性・・・療養看護が相当期間に及んでいること(1年以上など) ⑤寄与行為の結果として、相続財産が維持または増加していること(因果関係) |
2 寄与分算出方法の例
【療養看護型・計算式】 =報酬相当額(日当)×日数 ×裁量割合 |
介護保険における介護報酬基準などを用いて報酬相当額を出し、これに療養看護をした日数を乗じて算出します。この算出した金額に「裁量割合」を乗じて、個別の事案ごとに寄与分を判断することになります。裁量割合は、通常0.5~0.8程度の間であることが多いようです。
3 その他の問題
療養看護型の寄与分は、被相続人が療養看護が必要な状態(病気や認知症により介護が必要など)であることが要件であり、健康な被相続人に対して家事を手伝ったとしても寄与分は認められません。寄与分が認められるためには、被相続人が要介護2以上の状態にあることが目安になるようです。また、被相続人の通院に付き添うことは、親族として通常期待される範囲内と言えることから、基本的に寄与分は認められません。
第5 扶養型
1 要件
相続人が被相続人を扶養し、被相続人が生活費の支出を免れたため財産が維持されたような場合です。
【扶養型の寄与分が認められるための要件】 ①被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える特別の寄与であること ②扶養の必要性・・・被相続人が扶養が必要な状態にあること ③無償性・・・扶養が無償またはこれに近い状態でなされていること ④継続性・・・扶養が相当期間に及んでいること ⑤寄与行為の結果として、相続財産が維持または増加していること(因果関係) |
2 寄与分算出方法の例
【扶養型・計算式】 =扶養のために負担した金額 × 裁量割合 |
扶養のために負担した金額は、他の家族の生活費と一緒になっているなどして算出が難しい場合もあります。このため、生活保護基準などを参考にして、扶養のために必要な金額を出す場合もあります。また、負担した金額全額がそのまま寄与分として認められるのではなく、個別の事情に応じた裁量割合を乗じて算出することになります。
第6 まとめ
以上のようにして寄与分を算出しますが、実際に寄与分が認められるケースは少ないというの実感としてあります。そもそも寄与分を認める程の寄与行為にない、ということなどが理由です。
寄与分の問題についてお悩みの方は、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
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