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養子縁組による相続トラブル

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第1 養子縁組による相続トラブル

 節税対策として養子縁組をすることを検討する方もいらっしゃると思います。ですが、養子縁組をすることによりトラブルが生じることがありますので、養子縁組をする場合は、それを踏まえて判断をする必要があります。

第2 もともとの相続人の取り分が減る

 養子縁組をすると、養子は養親と法律上の親子として扱われます。
 このため、養親が死亡した場合、養子は実子と同じ扱いとなり、相続人である子の一人としてカウントされます。これにより、その分、実子の法定相続分が減ることになります。

 例えば、もともと実子2人が、各2分の1ずつ相続するはずであったところ、養子縁組をすると、子が3人(実子2人+養子1人)となりますので、実子の相続分が3分の1になります。

 養子縁組をするときに、実子の了解を得る必要はありませんが、養子縁組によって子や他の相続人の相続分が変動する場合は、予め相続人達に話をしておいた方がトラブルを避けられるでしょう。
 また、このとき実子の相続分を減らしたくない場合は、予め遺言書を作成しておく方法も有効です。

第3 養子縁組を解消することが大変である

 一度養子縁組をすると、それを解消するのは大変です。離婚と同じという訳ではないですが、それに近しいイメージかもしれません。
 例えば、老後の面倒を見てくれると言うから養子縁組をしたのに、縁組をしたら老後の面倒は全く見てくれず、遺産だけ貰おうとしているような場合など、離縁したいと考えるかもしれません。

 養子縁組を解消することに相手が同意してくれたら良いのですが、もし相手が任意に応じてくれない場合、家庭裁判所で離縁を求めることになります。

 この場合、離婚と同じく、まず離縁の調停を申立てて調停で話し合いを行います(調停前置主義)。そして、調停が不成立となったときは、離縁訴訟を起こさなければなりません。
 裁判で離縁が認められるのは、以下の場合に限られています(民法814条1項)

①養親又は養子が相手から悪意で遺棄されたとき

②養親又は養子が3年以上生死不明となったとき

③その他、養子縁組関係を継続し難い重大な事由があるとき

 この要件は、裁判上の離婚が認められる場合の要件と共通している部分があり、裁判で離縁を求めるのも離婚と同じように大変です。

第4 相続税対策としての限界

 相続税対策を一つの理由として養子縁組をした場合、この方法は節税対策として限界があると言えます。例えば、相続税の基礎控除額生命保険の非課税限度額死亡保険金の非課税限度額を算出するときに、養子も相続人の一人としてカウントすることによって、非課税となる金額を増やして相続税の金額を押えることになるのですが、このとき養子が相続人としてカウントされる人数に制限があります。

実子がいる場合、養子は1人まで
実子がいない場合、養子は2人まで

 しかカウントすることができません。
 つまり、相続税対策のために3人以上と養子縁組をしても意味がないのです。

 また、そもそも養子縁組は,法律上の親子関係を結ぶための制度です。このため、相続税対策だけを目的とした養子縁組は、本当に法律上の親子関係を結ぶ意思がないとして無効になる可能性もあります。

 

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