遺産分割問題
Contents
・兄弟から、理不尽な遺産分割協議書に判を押すように求められた
・母と姉が結託して、自分に不利な遺産分割を進めている
・遺言書が見つかったが、自分の取り分が少なく、本人が作成したのか疑わしい
・腹違いの兄弟と遺産分割をすることになったが、20年来会ったこともなく、揉めそうである
遺産分割で相続人同士が揉めるのは、当事者のうちの誰かが、自分の都合の良いように、理不尽な要求を通そうとしているためです。特に肉親同士の争いですから、一旦、誰かが感情的になってしまうと、遺産分割に関連のないことに議論が飛躍してしまったりして、収まりがつかなくなってしまうことが多いのです。
その結果、相続人が当事者同士で話し合っても埒が明かず、争いが長期化し、精神面での消耗戦になってしまうこともしばしばです。
また、次のような場合は、相続争いに発展する可能性が高いと言えます
・相続人同士の仲が悪い場合
・相続人同士が疎遠で、長い間連絡をとっていない場合
・被相続人と相続人の一部が、生前から結託しているような場合
・被相続人が、生前、愛人や宗教関係者などの第三者に取り込まれていた場合
・腹違いの兄弟がいる場合
相続争いが発生した場合や、遺産分割に関して揉めることが予想される場合、まずは弁護士にご相談ください。
弁護士は、客観的な状況を把握した上で、あなたが望まれる相続を実現するお手伝いをすることができます。当然、法定相続(法律で定められた相続のルール)が基本になりますが、実際の遺産分割の現場では、生前の事情によって、これを調整することが必要になります。そのためには、最終的に調停や裁判になる場合を見据えながら、客観的な証拠を集めて、説得力のある主張を組み立てなければなりません。
今抱えている疑問、浮上している問題、親類縁者の状況、故人のこと、等々、より多くの情報があればあるほど、アドバイスがしやすくなります。
なお、皆様の円滑な相続を実現するため、初回のご相談料は無料とさせていただいております。
遺産分割問題解決の流れ
さて、相続が発生して、遺産分割を行う場合、大きく分けると遺言の有無によって、2つの流れがあります。
相続発生
遺言がある場合・・・原則として、遺言に沿って相続する
遺言がない場合・・・裁判外での遺産分割協議書の作成や、裁判所での調停・審判の上、取り決められた内容に基づき、相続する
遺言がある場合
被相続人の遺言がある場合は、原則として、遺言に沿って相続を行います(例外的に、相続人全員の合意があれば、遺言と異なる内容の遺産分割協議を行うことが可能な場合があります)。
しかし、遺言書に不備がある場合や、ご本人が書いたものかどうか確認できない場合などには、遺言の効力が認められないことがあります。そのような遺言に基づいて相続を行っても、効力は生じません。そのため、遺言がある場合でも、その形式に疑いがある場合や、その内容に納得がいかない場合には、裁判所に対し、遺言の有効・無効を確認する訴訟を提起して、遺言の効力を確定する必要があります。遺言の効力を判断するには、専門的な知識及び能力が必要となりますので、疑問がある場合、ぜひ弁護士にご相談ください。
また、例えば、兄弟が3人いるのに、「長男に全てを相続させる」という遺言があるような場合には、他の兄弟2人は遺留分を侵害されることになりますので、長男に対して、遺留分減殺請求を行うことができます。ただし、遺留分減殺請求には、期限があります。期限を過ぎて放置してしまうと、請求が認められなくなりますので、ご注意ください。
遺言がない場合(遺言が無効である場合も含みます。)
被相続人の遺言がない場合には、法律によって定められた相続人(法定相続人)全員により、遺産分割協議書を作成する、あるいは裁判所に対し調停や審判を求めることになります。
この場合の遺産分割の流れは次のようになります。
① 相続調査 → (② 遺産や相続人の範囲を確定するための訴訟→)
③ 遺産分割協議 → ④ 遺産分割調停 → ⑤ 審判
①相続調査
遺産分割協議に当っては、相続人(法定相続人)と相続財産の確定が必要です。相続人の戸籍謄本の収集や、相続財産目録の作成を行うことになります。
遺産分割協議が終了した後に、新たな相続人が見つかった場合や、相続人でない者が参加していることが分かった場合などは、せっかく成立した協議内容が無効になってしまいますので、注意が必要です。
法定相続人や相続財産の確定には多くの労力を要する場合も多いです。そのような可能性がある場合は、あらかじめ、専門家である弁護士に相続調査を頼んだほうが良いといえます。
②遺産や相続人の範囲を確定するための訴訟
上述のとおり、遺産分割は共同相続人の全員によってなされなければならず、これに反した遺産分割は無効となります。
また、遺産の範囲についても、遺産の一部が漏れていた場合や、遺産でない財産を遺産分割の対象とした場合、その遺産分割の効力に問題が生じます。相続人全員が合意の上、遺産の一部を分割することは有効ですが、残りの遺産についてあらためて遺産分割が必要になります。遺産の一部を除外した遺産分割は、一部分割として許容される余地もありますが、遺産分割の対象とされなかった遺産の存在が分かっていれば全く異なった遺産分割がされていたという事情が認められる場合には、無効とされるでしょう。
そのため、相続人の範囲や相続財産の範囲に争いがある場合は、遺産分割の前提として、その真否を確定しておく必要があります。
家庭裁判所の審判の中で、これらの前提事実について判断することもできますが、その後、訴訟となり、審判と異なる判断が確定した場合、訴訟の判断が優先するので、家庭裁判所の審判は効力を失い、せっかくの遺産分割審判が無に帰してしまいます。そこで、実務では、遺産分割の前提事実に争いがある場合には、まず訴訟で確定させるという取扱いがなされています。訴訟となれば、殆どの場合、双方に代理人の弁護士がつくことになります。
③遺産分割協議
相続調査(及び訴訟)によって、相続人と相続財産の範囲が確定したら、遺産分割協議を行います。遺産分割協議とは、相続人全員による話し合いであれば足り、特に決まった方式があるわけではありません。話し合いがまとまった場合は、その内容にもとづいて、遺産分割協議書を作成し、これによって相続を行うことになります。
④ 遺産分割調停
遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。家庭裁判所に対し、調停ではなく審判を申し立てることも可能ですが、その場合でも、家庭裁判所が職権で調停に付すことが通常の取扱いとなっています。
調停とは、簡単に言うと、調停委員を仲介者とした交渉のことです。その結果、相続人全員が合意に達した場合は、裁判所書記官が調停調書を作成し、これにもとづいて相続を行うことになります。調停になった場合は、双方に弁護士がつく場合が多いです。
⑤ 審判
調停が不調(不成立)になった場合、家庭裁判所の審判の手続きに移行します。審判では、裁判官が、双方の主張を聞いたうえで、審判を下すことになります。審判が出た場合、これに基づいて相続がなされることになります。審判に不服がある場合は、審判の告知の日から2週間以内に抗告しなければなりません。
遺産分割を行う場合、特に、相続人間ですでに揉めている場合や、今後揉める可能性がある場合は、上記の解決までの全体像を見越した上で、最適な解決方法を考える必要があります。
話し合いで解決するほうが有利になるのか、裁判所の手続を利用したほうが良いのかは、ご相談者様の状況によって、ケースバイケースです。
当然、弁護士にご相談いただく場合には、これらの全体像を踏まえて、最適な解決方法をアドバイスさせて頂きます。
相続調査について
遺産分割協議を行うに当っては、まずは、相続人と相続財産を確定させなければなりません。
相続人に不足や不備があった場合には、せっかく成立した遺産分割協議は無効になりますし、相続財産に不足や不備があった場合も、遺産分割協議は無効になる可能性があります。そのような場合、再度、協議をし、相続人全員の合意を取った上で、遺産分割協議書を作成し直さなければならないからです。
また、被相続人に、債務等マイナスの財産がある場合は、注意が必要です。というのも、被相続人が死んだこと、そして自分がその相続人であることを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対し、相続放棄(相続を受けた人が、財産の一切を引き継がないことをいいます。)や限定承認(相続を受けた人が、プラスの財産の範囲でのみマイナスの財産を引き継ぐことをいいます。)を申告しなかった場合には、単純承認といって、プラス・マイナス関わらず、すべての財産を承継することになってしまうからです。その結果、遺産相続で損をしてしまう可能性があります。ですから、相続人としては、早期に相続財産の範囲を確定する必要があります。
・被相続人が、生前に財産を明らかにしなかったので、今判明している財産で全てかどうかが
分からない
・不動産や株式など、相続財産の価値をどう評価すべきか(いくらなのか?)よく分からない
・被相続人に、判明していない借入金があるかもしれない
・被相続人には複数の愛人などがいて、家族関係が複雑なので、誰が相続人か良く分からない
・消息不明の相続人がいる
このような場合は、専門家に相続調査を依頼してください。相続調査には、①相続人の範囲を調べる相続人調査と、②相続財産の範囲を調べる相続財産調査があります。
相続人調査では、戸籍謄本を取り寄せて、相続人を確定します。また、相続財産調査では、被相続人の財産につき、開示を依頼するなどして調査したうえ、相続財産目録を作成します。
財産の種類によっては、その所在や価値を見極めるのが困難なものも多いです。当事務所では、税理士や不動産鑑定士、土地家屋調査士と密に提携しておりますので、相続財産の評価や所在地の確定なども、これらの専門家と提携して、実施させて頂きます。
遺産分割協議と遺産分割協議書
相続が発生したが、被相続人が遺言を残していない場合や、遺言が無効であった場合、相続人間で遺産分割協議を行って、遺産分割協議書を作成し、これにもとづいて相続を行うことになります。遺産分割協議は、必ずしも全員が一同に集まって行う必要はなく、全員が協議内容に合意していれば問題ありません。つまり、一部の相続人で遺産分割協議書を作成し、残りの相続人に回付して署名・捺印してもらうという方法でもかまいません。
遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、相続人全員が署名・捺印し、全員分を作成して、各人が保管します。遺産分割協議書があれば、各種機関への名義変更等の相続手続きを容易に行うことができます。特に、不動産の所有権の移転登記手続は、遺産分割協議書がなければ行えません。また、遺産分割協議書には、その後の紛争を予防する効果もあります。
逆に言えば、遺産分割協議書があればこれらの相続手続きを行うことができるということには、注意をしておかなければなりません。
相続人の1人又は複数人が結託して、勝手に遺産分割協議書を作成し、他の相続人に対し、強引に署名・捺印を迫るような事態が想定されるからです。
このようなケースで安易に署名・捺印してしまうと、当然、所有権の移転登記手続きなどが進んでしまうことになります。ですから、他の相続人が作成した遺産分割協議書に納得できない場合は、署名・捺印を保留して、ぜひ専門家である弁護士にご相談ください。
また、相続人同士で遺産分割協議を行う場合も、事前に専門家である弁護士に相談しておくことをおすすめします。弁護士は、ご相談者様の状況や要望を聞き取った上で、遺産分割協議書の場でどのような主張をするべきかアドバイスすることができます。遺産分割協議の場でした不用意な発言が、後で不利に働いてしまうこともよくありますので、事前に相談することが大切です。
当然、ご相談者様と他の相続人の主張が対立することが予想される場合には、その対処方法も含めてアドバイスいたします。
さらに、場合によっては、そもそも遺産分割協議自体を弁護士に代理してもらった方が良い場合もあります。
・当事者同士では感情的になり、遺産分割協議がまとまりそうにない場合
・他の相続人が理不尽な要求をしている場合
・他の相続人が理不尽な要求をしているが、力関係が不利な場合
・相手が口達者で、丸め込まれてしまいそうな場合
・他の相続人同士が結託している場合
・他の相続人が、税理士など、第三者からのアドバイスを受けている場合
・ご自身で遺産分割協議を行うことが精神的に苦痛である場合
このような場合は、弁護士に遺産分割協議を代理してもらうことも1つの方法です。
弁護士に代理人としての交渉を依頼した場合、当然、弁護士は調停や審判になった場合の結果を踏まえて交渉を行いますし、ご相談者様のご要望にできるだけ沿うように、証拠を集め、相手を説得する方法を考えることができます。
遺産分割協議が長期化し、調停や裁判に移行してしまうよりも早い段階で、専門家に交渉を任せた方が、結果として、スピーディーでかつご相談者様のご希望に沿った解決になることもあります。
遺産分割協議に不安がある場合や、相続人同士で揉めることが予想される場合、あるいはすでに揉めている場合は、まず一度、専門家である弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
遺産分割調停と審判
・感情的に揉めてしまって、遺産分割協議がまとまらない
・話合いが堂々めぐりで一向に進まない
・相続人の一部が、そもそも話し合いに応じてくれない
このような場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てる方法があります。調停を申し立てるべきか、交渉を続けるべきか、判断が難しい場合は、専門家である弁護士に相談されると良いでしょう。
また、上記のような状況で、逆に他の相続人から調停を申し立てられることがありますが、いきなり調停を申し立てられた側は、非常に戸惑われることと思います。そのような場合も、弁護士にご相談ください。
このページでは、遺産分割調停と審判について、ご説明いたします。
遺産分割調停とは
遺産分割調停は、相続人の1人又は複数人が、家庭裁判所に、残りの相続人を相手方として申し立てることによって開始されます。
調停では、家庭裁判所から選任された調停委員(又は裁判官)を仲介者として、相手方と交渉を進めることになります。調停は月1回程度行われ、申立人と相手方が交互に調停室に入って、調停委員と話をします。調停委員は、仲介者として、申立人と相手方の双方の意見を聞きながら、遺産分割がまとまるようにアドバイスをしてくれます。
調停がまとまったら、つまり、申立人と相手方が合意に達したら、裁判所がその内容をまとめた調停調書を作成し、調停は終了となります。調停調書には債務名義としての効力があるので、その内容を強制的に実現することができます。
調停のポイント
調停を有利に進めるためには、いかに調停委員に納得してもらえるように、証拠を用い、主張を組み立てるか、ということが重要になります。
その際、当然、審判に移行することを想定して、主張を組み立てることが重要です。
調停に当っては、事前に弁護士にアドバイスを受けるか、代理人として調停に出てもらうのが良いでしょう。
また、調停の相手方が弁護士をつけてきた場合には、プロ対素人の構図になってしまい、不利になってしまう場合が多いと思われますので、その場合は、こちらも弁護士をつけられることをおすすめします。
審判とは
遺産分割の調停が不調に終わった場合、自動的に審判手続きに移行します。別途、審判の申立てをする必要はありません。
審判では、当事者双方が主張とそれを裏付ける証拠を提出し、それにもとづいて、裁判官が審判を下します。基本的に、調停とは異なり、当事者が一同に会することになります。審判中も、随時、当事者同士が話し合う機会がもたれることが多いです。
遺産分割の審判は、告知の日の翌日から2週間で確定します。確定した審判の内容は、強制的に実現することができます。そのため、審判に不服がある場合は、告知の日の翌日から2週間以内に抗告する必要があります。
遺産分割の調停や審判について、不明な点や不安なことがありましたら、一人で悩まずに、弁護士にご相談されることをおすすめします。
遺産分割の訴訟について
相続が発生して、相続人の間で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて、法的手続きをとることができます。また、調停がまとまらない場合には、審判続きに移行し、裁判官が審判を行います。
但し、相続財産や相続人の範囲など、遺産分割協議を行うにあたっての前提となる事実関係について、相続人間で主張が対立している場合には、地方裁判所に民事訴訟を提起して、判決を受け、事実関係を確定させることが有益といえます。
相続財産の範囲を争う訴訟として、
①所有権確認訴訟(当該財産が自己の固有の財産であり、遺産分割の対象ではないということを主張する訴訟)
②共有持分権確認訴訟(当該財産が被相続人の遺産に帰属し、自己が当該財産に共有持分権を有しているということを主張する訴訟)
③遺産確認訴訟(当該財産が被相続人の遺産に帰属することの確認を求める訴訟)
の3つの種類があります。
相続人の範囲を争うには、身分関係訴訟を提起することになります。協議や調停の段階で、これらの事実関係に争いがある場合で、話し合っても平行線を辿ることは必至と思われる場合には、上述した訴訟を提起することも視野に入れなければなりません。
訴訟を提起するかどうかの判断は、相続の全体像を把握し、訴訟の結果なども想定したうえで行うべきです。遺産分割の訴訟の流れや、訴訟になった場合に予想される結論については、事前に弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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