神戸・姫路の弁護士による相続相談弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ(兵庫県弁護士会所属)神戸駅1分/姫路駅1分

個人事業主・自営業者の相続問題

1 はじめに

 個人事業主・自営業者(以下「個人事業主」といいます。)の方がお亡くなりになった場合の相続については、事業を営んでいたという点で、個人事業主特有の注意すべき点があります。

 

2 各種の届出が必要

(1) 廃業届

 税務署に個人事業の廃業届を提出することが必要です。相続人が事業を引き継ぐ場合でも必要なことに注意してください。個人事業主が死亡した日から1か月以内に届け出る必要があります。

(2) 事業廃止届・死亡届

 消費税の課税事業者であった場合は、個人事業主の死亡後速やかに、税務署に事業廃止届と死亡届を提出する必要があります。

(3) 給与支払い事務所等の廃止の届け出

 従業員を雇用していた場合、税務署に給与支払い事務所等の廃止を届け出なければなりません。

(4) 準確定申告

 個人事業主が死亡してから4か月以内に、その年の所得税の準確定申告をしなければなりません。相続税の確定申告が10か月以内であることとの違いに注意してください。

3 事業を承継する場合に特有の問題

(1) 各種の届出

 死亡した個人事業主が行っていた事業を相続人が承継する場合、あらためて、①個人事業の開業届、②給与支払い事務所等の開設の届出、③(青色申告をするためには)所得税の青色申告承認申請書を提出する必要があります(相続人が以前から青色申告をしていた場合を除きます)。

(2) 事業用財産の承継

 事業用の財産である死亡した個人事業主が事業に利用していた財産は、事業を承継する相続人(以下「後継者」といいます。)に集中させる必要があります。事業用の財産には、棚卸資産、機械・工具類、屋号、売掛金や預金などがありますが、これらを他の相続人が相続してしまうと、事業の継続に支障を来すことになります。
 事業用の財産には、これらのプラスの財産だけでなく、金融機関からの借入金、買掛金、税金などのマイナスの財産も含まれます。事業を継続していく以上は、これらの負債についても後継者が相続することが通常と思われます。

(3) 事業承継を円滑に行うために

①遺言書の活用

 個人事業主の生前に後継者が決まっている場合、事業用財産はすべて後継者に相続させる内容の遺言書を作成しておくことによって、財産の分割について相続人で協議することなく、後継者に事業用の財産を相続させることができます。

②生前贈与の活用

 個人事業主の生前に、事業用の財産を後継者に贈与しておくことで、事業用の財産が分割されてしまう不都合を回避することができます。もっとも、贈与税の負担は否めません。なお、個人版事業承継税制を活用することで、贈与税の負担を回避することができますが、令和6年(2014年)3月31日までに、個人事業承継計画を策定し、都道府県知事に提出しておかなければなりません。

③生命保険の活用

 遺言書であれ、生前贈与であれ、後継者に事業の財産を集中させた結果、相続できる財産が少なくなってしまう相続人が生じて、遺留分の支払が必要となることがあります。また、事業用の財産に固定資産が多く、相続税の資金が不足することがあります。そこで、後継者を保険金の受取人とする生命保険をかけておき、遺留分や相続税に充てる資金を準備しておくことも考えられます。

④法人化の検討

 根本的な対策として、事業を法人化しておくことで、事業用の財産を個人の財産から分離し、相続問題を発生させないということも検討に値するでしょう。もっとも、法人の株式の相続については、後継者に株式を集中させる対策とっておく必要があります。この対策には、上記①②③を活用することが可能です。

4 弁護士に相談を

 このように、個人事業主や自営業者の相続には、特有の困難が伴います。これらの問題に対処するためには、専門的な知識と計画が不可欠です。適切なアドバイスを得るためにも、早期から法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。