遺留分を請求したい
第1 請求できる人
遺留分侵害額請求をすることができるのは、兄弟姉妹以外の相続人です。すなわち、配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属です(民法1042条)
第2 請求する相手方
遺留分を侵害する遺贈または贈与を受けた者に請求します。相手方になると思われる者が複数いて、請求時点で誰が債務者であるか明確ではないときは、とりあえず請求できると思われる相手方すべてに請求しておくのが無難でしょう。
第3 行使方法
相手に意思表示をして行使すれば良く、権利を行使するために必ず裁判をしなければならないということではありません。このため、まずは相手と話し合いをして解決を目指すことになります。
相手との話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります(調停前置主義・家事事件手続法257条)。
調停でも話がつかずに調停が不成立となった場合は、裁判を起こして解決することになります。裁判を起こす場合は、家庭裁判所ではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所が管轄裁判所になります(民事訴訟法5条14号)。
第4 まずは早めに請求する
遺留分侵害額請求には、消滅時効・除斥期間があります。
【遺留分侵害額請求の消滅時効】(民法1048条)
①相続の開始及び遺留分を侵害する贈与(遺贈)があったことを知ったときから1年間行使しないとき |
このように早ければ相続開始(死亡時)から1年で消滅時効にかかり、請求できなくなります。また、相続開始(死亡時)から10年を過ぎると請求権が消滅します(除斥期間)。
このため、まずは相手に内容証明郵便を送付し、遺留分侵害額請求をする旨の意思表示をしておきます。このとき、具体的な金額を明らかにして請求することが難しいことも多いと思いますので、金額は明示せず、まずは請求権を行使するという意思を明確にしておきます。
第5 遺留分の計算方法
遺留分侵害額の計算方法は、以下のようになります。
1 遺留分算定の基礎となる財産の価額
まずは遺留分の算定の基礎となる財産の価額を出します。
【遺留分の算定の基礎となる財産の価額の算定式】
遺留分の算定の基礎となる財産の価額 |
この算定式により算出した金額に、遺留分の割合(例えば4分の1など)を乗じて、遺留分額を出します。(関連記事:遺留分とは)
【遺留分額の算定式】
遺留分額=遺留分算定の基礎となる財産の価額×遺留分割合 |
このときの財産の評価は、相続開始時を基準に評価します。
第三者が受取人になっている生命保険金は、受取人の固有の権利であるため、被相続人の財産には含まれません。死亡退職金も同様に考えられます。
また、ここで加算される贈与は、原則として相続開始前1年間になされたものに限られます(第三者への贈与。民法1044条1項前段)。
これに対し、相続人の一人に対してなされた贈与で特別受益となるものは、相続開始前10年間にされたものまで参入されます。
さらに、ここで控除する債務については、税金なども含まれますが、相続税や相続財産管理費用などについては含まれません。また、連帯保証債務については、将来的に負担するかが不確定な債務であるため、特段の事情がない限り、ここでいう「債務」には含まれません。
2 遺留分侵害額を計算する
次に、遺留分侵害額を計算します。
【遺留分侵害額の計算】
遺留分侵害額 |
例えば、上記1で算出した遺留分額が1000万円であるとしても、遺言書の中で請求権者の相続人が300万円を取得すると指定されていた場合は、1000万円から取得額の300万円を控除した700万円が、遺留分侵害額となります。
また、遺留分請求者が、被相続人から生前に特別受益に当たる生前贈与を受けていた場合は、その金額を差し引いた金額が、遺留分侵害額となります。なお、このときに差し引かれる特別受益については、期間の制限がありません。
3 誰にいくら請求できるか
受遺者または受贈者が複数人いるとき、誰に対して請求することになるのでしょうか。これについては、民法でその請求順序が定められています(民法1047条)。
【請求順序】(民法1047条) ① 受遺者と受贈者があるとき |
「特定の財産を特定の相続人に相続させる」旨の遺言については、遺贈と同視されます。
このため、以下の順番で請求することになります。
①遺贈=「相続させる遺言」→②死因贈与 |
なお、遺贈というのは、遺言により贈与をすることで、被相続人が一方的に行う行為です。
これに対し、贈与は、被相続人と贈与を受ける人との間の合意により成立するという違いがあります。生前に贈与の合意をして、生前に渡すのが生前贈与、死亡を原因として渡すのが死因贈与となります。
第6 まとめ
遺留分の計算は複雑で、弁護士でも正確に計算するのには時間がかかります。このため、遺留分侵害額請求をお考えの方は、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
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