生前の相続対策について
第1 生前対策の必要性
生前対策は、相続税の節税で行う方も多いですが、その他、自分の思うように財産を承継させたり、自分や配偶者の老後の安定した生活を確保したり、将来相続人の間で相続争いを避けるためにも必要なものです。
第2 生前の相続対策について
具体的には、以下のような相続対策があります。
①遺言書の作成
②信託
③生命保険の活用
④生前贈与
⑤養子縁組
1 遺言書の作成
遺言書を作成することで、誰にどのような遺産を承継させるかを決めることができます。また、推定相続人以外の第三者に遺産を遺すこともできます。
基本的には、遺言書で指定された通りに、それぞれが遺産を取得することになりますので、相続人間で紛争となるおそれも少なくなります。
2 信託
遺言の代わりに信託契約を行う方法もあります。遺言書ではなく信託契約をするメリットは、契約であるため遺言に比べて内容の自由度が高い点にあります。このため、事業承継を自分の思い通りに実現するのにも信託は向いています。
また老後の生活に備え、信託財産を受託者に託すことで、自分が認知症になった場合でも、自分の希望通りに財産管理をしてもらえることが可能です。
また、自分の死後に誰にどのように遺産を承継させるかという点についても、遺言書に比べて自由に設定することが可能となります。
3 生命保険の活用
生命保険の受取人を相続人のうち一人に指定すると、生命保険金は相続財産ではなく、保険金受取人の財産となります。このため生命保険金については、遺産分割の対象とならないため、無用な相続争いを避けながら、確実に遺産を承継させることが可能です。
また、相続税との関係では、死亡保険金について500万円×法定相続人の数=非課税限度額となりますので、非課税限度額をうまく利用すれば、相続税の節税にもなります。
4 生前贈与
生前贈与をして、生前に財産を相続人に承継させることで相続税の節税をすることが可能です。
暦年贈与を利用すれば、年間110万円以下であれば非課税です。このため、毎年贈与を行えば、税金がかからずに財産を移転させることができます。また、年間310万円以下の贈与であれば、贈与税の税率が最低税率の10%ですので、相続税の税率よりも低い税率で財産を移転させることができる場合があります。
また、相続時精算課税制度を利用する場合は、贈与時の価格にて相続税を精算することになるので、将来値上がりが見込まれる財産を贈与する場合は、この制度を利用する方が有利な場合があります。
5 養子縁組
養子縁組をすることで、相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)の金額を増やすことができるため、相続税の負担を減らすことができます。
また、生命保険金、死亡退職金についての非課税限度額(500万円×法定相続人の数)も増えることになります。
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