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勘当した子供に相続させない方法

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第1 法律上の親子関係を切ることはできない 

 子供の身勝手な言動や浪費癖などから、「勘当したい」「子供と縁を切りたい」と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、現在の法制度では、親子の血縁関係を切ることはできません。ですが、その子について相続権をなくす方法、相続分を最小限に減らす方法等は存在します。以下では、これらの方法について詳しく説明していきます。

 江戸時代から明治時代にかけて、日本は「家」を中心とした家族体系となっており、家の当主たる「家長」がその他の「家族」を養い、家を守っていくという制度となっていました。このとき、家長にふさわしくない子などを家から廃除したり、戒めるため等の目的で、親が子との縁を切る「勘当」という制度が存在していました。勘当されると、法的に親子関係が切れ、相続権がはく奪されることになったようです。

 しかし、現行の民法においては、法律上血縁関係を切る制度は存在せず、法律上の親子関係を解消することはできません。このため、親が子を「勘当だ!」と言っても、何ら法的な意味を持つことはなく、今後親子として事実上の関係を持たないという程度の意味しかありません。法的な親子関係があると、お互いに民法上の扶養義務(民法730条)を負い、相続権を有することになります。

 なお、子供が養子である場合には、協議等により普通養子縁組の離縁(民法811条)をすることで、養親子関係を解消することができます。

第2  勘当した子供に財産を残さない方法

1 相続廃除を利用する方法

 遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をし、重大な侮辱を加え、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときには、相続人の廃除を家庭裁判所に請求できます(民法892条)。
 もっとも、廃除は、相続権を奪うものである以上、要件が厳格であり、単に親子喧嘩をした等の理由では認められず、司法統計上も、年間で30件程度しか廃除が認められていません。

 廃除は、遺言による意思表示によっても行うことができますが(民法893条)、上述のとおり立証が難しいことから、生前に自ら廃除の申立てを行うことが望ましいでしょう。なお、勘当した子供について、廃除が認められた場合であっても、同人の子が代襲相続することになるため、注意が必要です。

2 遺言による相続対策

 また、「相続人A(勘当した子供以外の相続人)に全財産を相続させる」といった遺言を残すことが考えられます。

 自筆証書遺言は、民法968条の形式的要件(全文自書、日付、署名、捺印)を満たす必要がありますが、これらに不備があると遺言が無効となってしまうため、公正証書遺言を残しておくことが望ましいでしょう。
 もっとも、後述するとおり、上記の遺言をしても、勘当をした子供には遺留分(最低限の相続分)があり、遺留分侵害額請求がなされる可能性があるため注意が必要です。

3 財産の生前贈与や遺贈

 勘当した子供以外の人に対して、生前贈与や遺贈を行う方法が考えられます。
生前贈与を行う場合、贈与契約書を作成し、贈与者と受贈者が署名押印をすることで、簡単に行うことができます。生前贈与を行う場合には、贈与税が生じる場合がありますので、税金について留意しながら行います。また、上記2の場合と同様に、勘当をした子供から、遺留分侵害額請求がされる可能性があります。

第3 遺留分侵害額請求を防ぐ方法

 遺留分侵害額請求権とは、相続人が、最低限保障されている相続分(遺留分)を下回る金額しか取得できなかった場合に、遺言により相続財産を取得した者(受遺者)等に対して請求する権利のことをいいます(民法1046条)。
 このため、例えば「相続人Aに全財産を相続させる」といった遺言を残した場合であっても、勘当したい子どもが、全財産を相続する相続人Aに対して遺留分侵害額請求をする可能性があります。このため、以下のような対策が必要となります。

 遺留分侵害額請求権の算定においては、遺留分を請求する者(勘当したい子)が、特別受益に当たる生前贈与を受けていた場合、この生前贈与がいつ行われたものであるかに関わりなく、請求額から控除されます(民法1046条2項)。

 このため、勘当した子供に対して、金銭を贈与したことがある場合、「〇年前に借金返済のために〇万円の生前贈与を受けました」といった念書を差し入れさせ、このことを理由として、遺産をすべて他の相続人に相続させる遺言を作成しておくことで、勘当した子供が、他の相続人に対して、遺留分侵害額請求権を行使することを防ぐことができます。
 念書の差し入れが難しい場合であっても、金銭を贈与した日付及び金額を特定して、通帳、払込伝票、領収書、借用書を残しておくことが望ましいといえます。公正証書遺言を作成する場合には、付言事項で、勘当した子供に対する生前贈与を具体的に記載し、弁護士を遺言執行者に指定しておくことで、実質的に遺留分侵害額請求権の行使を思いとどまらせることができます。

 

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