親子間の相続トラブルについて
第1 親子間の相続トラブル
1 はじめに
親と子という関係性だからこそ話しやすい話題もあれば、逆に話しにくい話題もあるかと思います。相続は家庭の中で話し合われるべき大切な話題ですが、なかなか時間を取って話をしにくい、あるいは、そもそも何をどう話せばよいか分からないといった方も多いのではないでしょうか。
以下では、こうした親子間での相続にあたって問題となり得るポイントに触れていきたいと思います。
2 相続させたくない人がいる場合
法律上、相続人となる人は決まっており、「法定相続人」と呼ばれています。そのため、世間一般には「勘当」や「親子の縁を切る」などといって親族の関係性を断つような言葉もありますが、こうした言葉を伝えたとしても、伝えられた人が法定相続人であることに変わりはなく、当然に相続を受ける権利を有したままということになります。
どうしても相続させたくない人がいる場合には、相続財産をその人に渡さないという遺言を残すことで、法定相続人からその人を除外したのと実質的に同様の効果が得られます。もっとも、ここで注意しなければならないのは、「遺留分」と呼ばれる兄弟姉妹以外の相続人が相続財産から最低限取得することのできる割合が法律上定められているということです。この遺留分を無視して遺言を残したとしても、後に遺留分侵害額請求をされるなど余計な紛争を招きかねません。遺留分侵害額請求をされれば、遺留分侵害額として算定された相当額を金銭で権利者に支払わなければならなくなります。
他にも、相続させたくない人を「廃除」することが考えられます。「廃除」は、上述した遺留分を有する相続人に対してのみ認められる手続きで、廃除対象者を特定して家庭裁判所に申し立てることで請求できます。廃除には、「生前廃除」と「遺言廃除」と呼ばれる2通りの方法が存在しており、どちらの方法によっても構いません。ただ、廃除が認められるケースは厳格に制限されており、裁判所が廃除を認めるハードルもかなり高いことから、申立にあたっては一度弁護士に相談することをおすすめします。
3 配偶者居住権について
近年の法改正により、「配偶者居住権」と呼ばれる制度が新設されました。配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合に、無償でその建物に居住する権利のことです。配偶者居住権には、短期配偶者居住権(少なくとも6か月は居住可能)と(長期)配偶配偶者居住権(配偶者の終身の間居住可能)の2種類が存在します。
法改正前までは、配偶者が従前どおりに建物に住み続けるには、遺産分割協議で居住用建物を取得する必要があり、そのためには他の財産の取得をあきらめざるを得ないという弊害がありました。こうした状況を打開するため創設されたのが配偶者居住権です。
配偶者居住権は登記をすることができ、居住建物の所有者は配偶者に対し登記を備えさせる義務を負います。この登記をすることで第三者に対しても配偶者居住権の権利を主張できるようになります。
第2 結語
相続は潜在的な問題の多い身近な法律問題です。相続に限った話ではありませんが、早め早めの対応が肝要ですので、何か少しでもお困りの際は遠慮なく弁護士へご相談下さい。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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