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親子間の相続トラブルについて

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第1 親子間の相続トラブル

 親子だからといって必ずしも仲が良いとは限らず、大人になってから金銭的に迷惑をかけられた、大喧嘩をした、価値観等が全く合わない等の様々な事情で、長年連絡を取っていないという親子もいます。
 民法上の親子関係があると、互いに扶養義務(民法877条)を負う他、どちらかが死亡した場合は、子または直系尊属として、法定相続人となります(民法887条、889条)。いわゆる「勘当」や「親子の縁を切る」などという親子の関係を断つような言葉もありますが、民法上親子関係を切る手段はありません。

 また、例えば、夫が亡くなった場合に、その法定相続人が配偶者である妻と子となることがあります。その場合、親子で遺産分割をする必要があります。親子の仲が良い場合など、円満に解決することも多々ありますが、親子の仲が悪かったり、親子の利害が対立しているしている場合は、親子であっても遺産相続をめぐる争いに発展することがあります。

第2 相続させたくない子がいる場合

 親子関係が悪い等の事情で、どうしても自分の財産を相続させたくない子がいる場合は、どのような方法を取ればよいでしょうか。

1 遺言を遺す

 どうしても相続させたくない人がいる場合には、遺言書を作成し、相続財産をその人に渡さない内容にする方法があります。法定相続人からその人を除外したのと実質的に同様の効果が得られます。
 もっとも、子には、「遺留分」と呼ばれる相続財産から最低限取得することのできる権利があるため、その子が遺留分を請求すると、遺留分に相当する金額がその子に支払われることになります。

2 生命保険金として遺産を遺す

 生命保険を契約し、遺産を遺したいと思う相続人を受取人にする方法があります。生命保険金は、法律上、受取人の固有の財産となり、遺産には含まれないことから、相続させたくない子に「生命保険金」分の遺産が渡らないことになります。

3 相続人の廃除をする

 この他、相続させたくない子を相続人から「廃除」する方法があります。この「廃除」は、遺留分を有する相続人に対してのみ認められる手続きで、廃除対象者を特定して家庭裁判所に申し立てることで請求できます。
 廃除には、「生前廃除」と「遺言廃除」と呼ばれる2通りの方法が存在しており、どちらの方法によっても構いません。ただ、廃除が認められるケースは厳格に制限されており、裁判所が廃除を認めるハードルもかなり高いことから、申立てにあたっては一度弁護士に相談することをおすすめします。

第3 遺産分割をめぐる親子の争い

 一方の配偶者が死亡し、他方の配偶者(親)と子どもがその相続人になった場合、親子間でも遺産相続をめぐって争いになることがあります。

1 親が家に住み続けたい場合

 被相続人の相続財産に自宅不動産がある場合、その不動産も相続財産として、遺産分割の対象となります。自宅不動産を親子で遺産分割しなければならないということになると、親(被相続人の配偶者)は、自宅不動産から出ていかなければならないのでしょうか。

 この点、近年の法改正により「配偶者居住権」と呼ばれる制度が新設されました。配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合に、無償でその建物に居住する権利のことです。配偶者居住権には、短期配偶者居住権(少なくとも6か月は居住可能)と(長期)配偶配偶者居住権(配偶者の終身の間居住可能)の2種類が存在します。
 この配偶者居住権により、配偶者である親は自宅に住み続けることが可能になります。

2 感情的な対立が大きく、話し合いが困難な場合

 親子であるがゆえに、感情的な対立が大きく、遺産分割の話し合いが困難という場合もあるかと思います。その場合、第三者である弁護士を代理人に立てて話し合いを行う、遺産分割調停を申し立てて、家庭裁判所の調停の場で話し合いを行うなどの方法を取る方が良い場合があります。

3 遺産分割を一時中断するのも一つの手

 親子間で激しく相続争いをしても、その親が亡くなった場合は、結局子が相続することになり、相続争いが無意味になるということもあります。また、親子で激しく対立した結果、感情的になった親が子に遺産を相続させないように遺言書を作成するということもあり得ます。
 このため、子としては、親と遺産相続争いをすることはデメリットが大きく、あまり賢明な選択とは言えないかもしれません。そうすると、遺産分割を一時中断したり、とりあえずは親に譲るというのも一つの方法だと言えるでしょう。

 

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