遺留分請求されたら
第1 基本的には支払わなければならない
遺留分は、遺族の生活保障、遺産の維持・形成に貢献してきた遺族への清算などの趣旨で、民法でで認められた権利です。このため、遺留分を請求された場合は、基本的には支払うというのが原則的な対応となります。
なお、遺留分を請求されなければ、こちらからあえて支払う必要はありません。
第2 請求してきたのは誰か
遺留分を請求されたら、まずはその人に遺留分の請求権があるか確認しましょう。
遺留分を請求できるのは、被相続人の配偶者、子、直系尊属(親など)のみです(民法1042条1項)。被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありませんので、兄弟姉妹から請求された場合は、請求を拒否することができます。
また、請求してきた人の遺留分の割合も確認しましょう。
遺留分権利者が配偶者または子の場合は、「2分の1×法定相続分の割合」が遺留分の割合となります(民法1042条)。一方、遺留分権利者が直系尊属(親など)のみの場合は、「3分の1×法定相続分の割合」が遺留分の割合になります(民法1042条)。
第3 1年以内に請求されたものか
遺留分は、請求できる期限があります。遺留分の請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する遺贈(贈与)があったことを知ったときから1年以内に行使しなければ、時効により消滅します(民法1048条)。
相続人の死亡時から1年を過ぎてから遺留分を請求された場合は、遺留分の請求権は時効により消滅している可能性があります。時効消滅している場合は、請求を拒否することができます。
第4 請求金額は妥当か
権利がある相続人か、請求権が消滅時効にかかっていないかを確認したら、次は請求金額が妥当かどうかを検討していくことになります。遺留分の計算は複雑であることもあり、遺留分権利者が請求してきた金額が間違っていたり、また相続財産を過大に評価するなどして、本来支払うべき金額よりも多い金額が請求される場合もあります。
遺留分侵害額として支払うべき金額を少なくする一つの方法は、相続財産の評価を下げる方法があります。遺留分侵害額は、算定の基礎となる相続財産の価額に遺留分の割合を乗じて計算しますので、相続財産の価額を下げることは、遺留分侵害額を減額させることにつながるのです。
評価額を争うことのできる財産で典型的なものは、不動産です。不動産の評価方法は一つではないため、不動産の評価額を下げる交渉をすることもできるのです。
第5 請求された場合の流れ
遺留分を請求される場合、まずは相手から遺留分侵害額請求権を行使するとの意思表示がなされます。内容証明郵便などで請求通知が届く場合もあります。
まずは話し合いで解決することを目指すのが良いでしょう。お互いの計算方法を確認して金額について話し合うなどします。
話し合いで解決することができない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てられる可能性があります。調停は、調停委員を介して相手と話し合いを進めていく手続きとなり、裁判ではないので、裁判所が遺留分侵害額を決めてくれる訳ではありません。
調停での話し合いもまとまらなかった場合は、裁判を起こされる可能性があります。裁判になれば、裁判所が証拠に基づき遺留分侵害額を認定して、支払いを命じることになります。裁判になって、時間もお金も労力もかかったのに、結果的にやはり相応額の支払いをしなければならない、という事態にならないよう、できるだけ話し合いや調停で解決するのが良いかもしれません。
第6 弁護士にご相談を
遺留分侵害額請求は、計算方法が複雑であり、計算方法その他によって遺留分侵害額を減らすことができる場合があります。このため、遺留分を請求された場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。弁護士にご相談いただければ、遺留分権利者からの請求の適法性を判断し、ご相談者様がとるべきアクションをアドバイスさせて頂きます。
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