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内縁の妻の相続

1 はじめに

内縁関係とは,婚姻届を提出していないものの,夫婦同然の生活をしている関係のことをいいます。事実婚も同じ意味です。

普段の生活ではあまり意識することがないかもしれませんが,内縁関係にある2人は,法律上の夫婦ではありません。この違いが,相続において大きな影響を及ぼします。以下では,内縁の妻の相続について,注意すべきポイントを説明します。

 

2 内縁の妻に相続権はない

民法上,相続人になる人は決められています(これを「法定相続人」といいます)。法定相続人となるのは,「配偶者,子,直系尊属(親など),兄弟姉妹」です。ここに,内縁関係にある者は含まれていません。つまり,内縁の妻は,法定相続人ではなく,相続権がないのです。したがって,内縁の妻は,内縁の夫が亡くなっても,遺産分割協議に参加することさえできません

 

3 内縁の妻に遺産を渡す方法

では,内縁の妻に遺産を渡す方法はないのでしょうか。以下では,その代表的な4つの方法をご紹介します。

方法①:遺言書を書く

内縁の夫が遺言書を書いておけば,遺産を内縁の妻に相続させることができます。遺言書によって相続させることを,「遺贈」といいます。

ただし,遺言書が有効と認められるための条件は,法律で厳格に決まっています。また,「すべての遺産を内縁の妻に相続させる」という内容の遺言を書いてしまうと,法定相続人との間でトラブルになります。法定相続人には,法律で最低限保障された取り分(遺留分)があり,この遺留分を侵害する遺言書を書いても,遺言書の内容通りにはいかない可能性があります。遺言書を書く際は,絶対に弁護士に相談してください。

方法②:生前贈与・死因贈与の契約を締結する

内縁の夫婦間で,贈与契約を締結するという方法もあります。生きている間にする贈与を生前贈与,亡くなった時に成立する贈与を死因贈与といいます。遺言は亡くなる人が単独で行うものですが,贈与は亡くなる人と受け取る人とが2人で行うものです。

贈与契約は口頭でもできますが,後にトラブルになることを防ぐために,贈与契約書を作成しておくと安心です。

方法③:生命保険を活用する

生命保険を活用する方法もあります。生命保険の被保険者を内縁の夫,受取人を内縁の妻にしておくことで,内縁の妻に財産を残すことができます。ただし,普通の遺産を相続した場合と同じように,相続税がかかりますので注意してください。

方法④:特別縁故者として受け取る

内縁の夫に,法定相続人が誰もいない場合,内縁の妻は,「特別縁故者」として,内縁の夫の遺産を受け取ることができます。もっとも,内縁の夫に法定相続人がいる場合は,「特別縁故者」が遺産を受け取ることはできませんので,ご注意ください。

 

4 まとめ

以上の通り,内縁の妻は,法定相続人ではないため,生前対策を何もしていない場合,遺産を受け取ることができない可能性が高いです。内縁関係の方は,生前対策の必要性が極めて高いといえます。そして,こうした生前対策は,認知症になってしまってからでは遅いですし,時間をかけて行った方がより有効な方法を採ることができる場合があります。内縁関係の方は,ぜひお早めに,相続について弁護士へご相談ください。