神戸・姫路の弁護士による相続相談弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ(兵庫県弁護士会所属)神戸駅1分/姫路駅1分

無断で相続手続をされた場合の対応方法

1 はじめに

 遺産である不動産の登記や預貯金の解約といった相続手続をすすめる上では、有効な遺言がある場合を除き、本来は相続人全員による遺産分割手続が必要です。
 ところが、相続人の方の一部が不正な方法を用いるなどして相続手続を無断で進めてしまうケースもあります。
 以下では、このように無断で相続手続をされてしまう場合の対応方法について解説していきます。

2 無断で相続手続をされてしまうケース

 相続手続を無断でされてしまうケースにも、様々なものがあります。

(1)遺言書を偽造されているケース

 亡くなられた方が、遺言書により有効な遺言をしている場合には、原則として、相続人の方の意向に拘わらず、遺言の内容に従って遺産を分けること(遺言執行)になります。
 そこで、相続人の一人が、自ら亡くなった方の遺産全部を相続する旨の遺言書を偽造して行使した場合には、他の相続人等が関与しないまま遺言が執行されてしまう可能性があります。

(2)遺産分割協議書を偽造されているケース

 遺産分割協議書とは、相続人全員が、遺産の分け方について協議し合意が成立したことを証明するための書面であり、本来は相続人全員が実印で押印したものを、印鑑証明書と合わせて用いることで、各種の相続手続を進めることができます。
 遺産分割協議書が偽造された上、不正に印鑑証明書等を取得されてしまうと、ご自身が関与できないまま相続手続を進められてしまう可能性があります。

(3)相続放棄申述書を偽造されているケース

 相続放棄を希望する人は、原則として相続開始から3カ月以内(法律上は、自己のために相続開始があったことを知った時から3カ月以内)に、家庭裁判所に相続放棄の申述書等を提出して相続放棄をすることができます。
 相続放棄をした人は、最初から相続人でなかったものとみなされるため、この相続放棄申述書が偽造され、勝手に裁判所に提出されてしまうと、ご自身が相続手続に関与することができないまま相続手続を進められてしまう可能性があります。

3 発覚後の対応方法

(1)手続の進行を阻止する

 偽造された遺言が執行されてしまう前であれば、遺言の無効確認訴訟等を提起して、勝訴判決を得ることで、手続の進行を阻止できる場合があります。もっとも、実際に遺言書の偽造が裁判所で認定されるケースは稀であり、単に亡くなられた方の生前の言動と大きく矛盾する内容の遺言があるといった事情のみでは、偽造を証明することが難しいといえます。
 遺産分割協議書や相続放棄申述書が偽造された場合にも、裁判所に無効確認を求める訴えを提起することが有効な場合があります。

(2)本来の手続を行う

 その上で、有効な遺言がある場合には、それを執行する手続をとることになりますし、遺言がない場合には、相続人全員による遺産分割手続を行うことで、本来のルールに従って遺産の分け方を決めることになります。
 その際、遺言書を偽造した相続人は、相続欠格(民法891条5号)に該当し、相続資格が認められない(残りの相続人で遺産を分ける)ことになる可能性があります。

(3)損害賠償等を行う

 既に相続手続が進行している場合には、手続の内容に応じて対応方法を考える必要があります。
 例えば、不動産について虚偽の相続登記がされてしまった場合には、その是正を求める訴え(一部抹消登記請求訴訟)を提起することが考えられますし、遺産である不動産や動産等が処分・換価されていたり、預貯金が解約されてしまっている場合には、損害賠償等を請求することが考えられます。

3 最後に

 以上のように、無断で相続手続がされるケースには様々なものがあり、できるかぎり早期に適切な対応方法を選択して実行する必要があります。
 とりわけ、訴訟によって遺産の取戻しを図る場合には、相続法分野の専門的知見が不可欠です。
 もし、「他の相続人に勝手に相続手続を進められているようだが、どうしたらよいのかわからない」といったことでお困りなら、相続問題に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。