不動産の評価方法について
第1 不動産の評価は重要
遺産分割の際、不動産の評価額をいくらと考えるかで、相続人の取り分が大きく変わってきます。
このため、遺産分割の際には不動産の評価額を決めることが非常に重要になってきます。
第2 不動産評価の方法
不動産の評価方法は、以下のようなものがあります。
1 固定資産税評価額
固定資産税の計算の基準となる価額です。
公示価格の70%程度に設定されており、実勢価格より低い場合も多いです。
もっとも、固定資産税評価証明書の取得が容易で、金額も明確であることから、実務ではこれを基準として不動産の評価額を決めることも多いです。例えば、固定資産税評価額÷0.7で算出した金額を用いることもあります。
2 路線価
相続税や贈与税の計算の基準とされている価額です。
公示価格の80%を目途に設定されています。路線価図は、国税庁がホームページで公開しているため、すぐに調べることができます。
また、相続税申告の際に、申告書に記載する価額であることから、実務でもこの路線価による価額を参考にすることも多いです。
3 公示価格
国土交通省が、特定の標準地について毎年1月1日を基準として公示する価格です。
国土交通省のホームページで検索することが可能です。
公示価格は、実勢価格に近い価格かもしれません。特定の標準値の価格であるため、特定のピンポイントの不動産の価格ではありません。
4 不動産業者の簡易査定
不動産業者に依頼すれば、不動産の簡易査定の金額を出してくれます。不動産業者は、近隣の取引事例などから、実際に売却できるであろう金額を算出してくれます。
実務では、複数の不動産業者による簡易査定書を提出して、その価格を参考にしながら、不動産の評価額を決めることも多いです。
第3 遺産分割協議・調停での決め方
遺産分割協議や、調停で不動産の評価額を決めるときは、まずは当事者の合意で決めることを目指します。上述した、固定資産税評価額、路線価、不動産業者の簡易査定などの金額を参考にしながら、当事者間で合意できる価額がいくらぐらいであるかを話し合います。
固定資産税評価額や路線価による金額そのままで合意する場合や、それらを70%~80%で割り戻した金額で合意する場合、不動産業者の簡易査定の平均額あたりで合意する場合など、さまざまなケースがあります。
第4 鑑定による不動産評価
当事者の合意により不動産の評価額を定めることができない場合、裁判所により選任された鑑定人(不動産鑑定士)によって、不動産の鑑定評価額を出してもらうことになります。
ただ、鑑定費用が数十万円以上必要となり、その費用を相続人が負担しなければならないので、鑑定を避けるため、当事者間で評価額の合意が成立する場合もあります。
不動産鑑定を行う際の評価方法としては、①取引事例比較法、②原価法、③収益還元法があります。
①取引事例比較法は、近隣の類似の物件の取引事例を比較して価格を算定する方法です。
②原価法は、建物が建築された費用を算定し、そこから経年劣化による減価償却を行うことで価格を算定する方法です。
③収益還元法は、不動産が将来生み出す利益(賃料)に鑑みて価格を算定する方法です。
実務的には、上記のいずれか1つの方法を用いたり、すべての方法を参考にして平均をとったりすることもあります。なお、借地権負担付の土地や借地権の場合、路線価図に記載されている借地権割合を参考にして計算します。
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