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不動産の相続について

1 はじめに

相続財産に不動産が含まれており,複数の相続人が存在する場合,預貯金のように単純に分割して終わりというわけにはいきません。令和3年には,不動産登記法の改正も行われ,相続人に対する法的義務や罰則規定も創設されましたので,適切に手続を行う必要があります。では,どのように手続を進めていけばよいのでしょうか。

 

2 不動産を相続する際の流れ

(1)遺言書の有無

相続手続を行うにあたっては,まずは遺言書の有無を確認することが必要です。もし遺言書が存在し,不動産を誰が相続するか明示されていれば,通常は遺言書に従って手続を行うことになります。

(2)遺言書がない場合

しかし,遺言書が存在しない場合,遺産分割協議によって,誰が不動産を取得するのか,どういう形で取得するのかを決めなければなりません。基本的には,売却して売却益を分割する方法(換価分割),相続人の一人が不動産を取得する代わりに代償金を支払う方法(代償分割),共有財産として相続する方法(共有分割)が考えられます。それぞれの方法については,後ほどご説明いたします。

(3)相続登記

具体的な分割方法が決まったら,相続登記をする必要があります。これまでは特段の罰則等は定められていませんでしたが,改正不動産登記法の施行後は,相続登記を怠れば,過料が課されることになりますので,忘れずに行うようにしましょう。

具体的な事情に応じて異なるものの,相続登記を行うにあたっては,遺言書または遺産分割協議書のほか,被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍,相続人の印鑑登録証明書等の書類が必要となります。

 

3 不動産をどう分割するか

上述のとおり,遺言書が存在しない場合,遺産分割協議を行い,分割方法を決めなければなりません。多くの場合,以下のいずれかの方法で分割を行います。

(1)換価分割

換価分割は,相続人が協力して不動産を売却し,売却で得た現金を分割する方法です。不動産自体をそのまま分けることは通常困難ですが,現金化してしまえば,相続人の数に応じて均等に分割するのも容易なため,不動産の評価額に争いがある場合や,不動産を誰が相続するのかなかなか決まらない場合に有効な手段となります。

(2)代償分割

代償分割は,相続人の1人が不動産自体を相続し,その代わりに不動産の価値に見合った現金を他の相続人に対して支払う(代償する)という分割方法です。対象となる不動産の取得を希望する相続人がいる場合には,この方法を選択することとなります。ただし,不動産の評価額を巡って紛争になったり,不動産を相続する者が代償金を準備することが困難であったりすると,協議の長期化の一因ともなります。

(3)共有分割

共有分割は,相続人が共有で不動産を取得する方法です。一見,簡便な方法に思えるかもしれません。しかし,不動産を共有状態にしてしまうと,例えば不動産の売却をしたくても,共有者全員の同意がなければ実行することができません。そのため,後から紛争になる可能性があります。

 

4 不動産の相続にかかる費用

不動産を相続する場合,気になるのが費用だと思います。相続財産全体の額や取得額に応じて相続税がかかるのはもちろん,登録免許税や,手続に必要な書類の取得費用等がかかります。また,税理士・司法書士・弁護士といった専門職に依頼する場合,その報酬が必要となります。

 

5 不動産の相続でトラブルになったら

相続財産に不動産が含まれる場合,トラブルになりやすいのは,不動産をいくらと評価するべきか,という点です。換価分割ならば実際に売却するので相続人の納得感も得やすいのですが,代償分割の場合には,査定額等を根拠に評価額を決するため,全員が納得する金額の合意に至ることが難しいのです。また,複数の相続人が同じ不動産の単独取得を希望したり,あるいは,当該不動産に相続人やその親族が住んでいたりすると,利益の対立が大きく,より協議が難航する傾向があります。

当事者間の協議で難しければ,家庭裁判所に調停を申し立て,更に調停でも合意困難であれば,裁判所に判断をしてもらう(審判)ことになります。しかし,調停や審判を行うにあたっては,適切に自分にとって有利な事情を主張しなければ,権利の実現は図れません。当事者間で円滑に話し合いができないようであれば,ぜひ弁護士へのご依頼をご検討ください。