療養看護型の寄与分とは
第1 療養看護型の寄与分とは
寄与分とは、被相続人の財産の維持又は増加に特別な貢献(=寄与行為)をした相続人がいる場合に、当該相続人の相続分を増やすという制度です。
寄与行為には、①被相続人が経営する家業を手伝っていた場合、②被相続人の事業に資金提供をしていた場合、③病気になった被相続人を看病したり、身の回りの世話をしたりしていた場合など様々な種類があるところ、③のことを療養看護型と呼んでいます。
実務においては、療養看護型の寄与分が認められるためのハードルが高く、実際に認められるケースが少ない印象です。
第2 療養看護型の寄与分が認められる要件
【療養看護型の寄与分が認められる要件】 1 相続人であること |
1 相続人であること
寄与分は、法定相続分を修正するための要素である以上、寄与分が認められるのは相続人(配偶者や子など)に限られます。
そのため、仮に被相続人の子の配偶者が、義理の親にあたる被相続人を長年介護していたとしても、寄与分を主張することはできません(近時、寄与分とは別に、「相続人ではない親族の特別寄与料」という制度が導入されました。参考記事:特別寄与料を請求したい)。
2 特別の寄与であること
寄与分が認められるためには、被相続人の財産の維持又は増加に特別の貢献(=「特別の寄与」)をする必要があります。
夫婦の間には同居・協力・扶助の義務が課され(民法752条)、親子・兄弟姉妹の間には扶養義務が課されています(民法877条)。これらの義務により通常期待される範囲を超えるような寄与をした場合でなければ、特別の貢献をしたとはいえません。そのため、夫婦や親子として多少身の回りの世話をした、通院に付き添ったという程度では、寄与分は認められないので注意が必要です。
3 寄与行為によって被相続人の財産が維持又は増加したこと
ある相続人が寄与行為を行った結果、本来であれば被相続人がプロの看護人に支払うべき看護費用(報酬)の支払を免れたことが必要となります。プロの看護人に支払う費用の支払いを免れた結果、被相続人の財産が維持された又は増加したと言えることが必要です。
寄与行為によっても財産の維持や増加の結果がなく、被相続人が単に精神的な安らぎを得たというだけでは寄与分は認められません。
第3 特別の寄与にあたるかの考慮要素
療養看護型の場合、以下の要素を考慮した上で、特別の寄与があったかどうか判断されることになります。
1 療養看護の必要性
被相続人が、療養看護を必要とする病状であり、かつ近親者による療養看護を必要としていたことが必要です。
そのため、どんなに重い病気を患っていたとしても、完全看護の病院に入院しており、近親者が療養看護する必要が全くない場合には、寄与分は認められません。
2 特別の貢献
前述の通り、身分関係に基づき当然要求されるレベルを超える程度の貢献が必要となります。
判断要素としては、被相続人の療養看護を要する程度や療養看護の期間などが挙げられます。特に前者については、介護保険における要介護度が重要な資料となり、要介護度2以上の状態にあることが一つの目安になると考えられています。
3 無償性
寄与行為は原則として無償でなければなりません。そのため、寄与行為の対価として、金銭の交付を受けていた場合には、寄与分は認められません。
4 継続性
療養看護が相当期間に及んでいることが必要となります。明確な期間が定められているわけではありませんが、過去の裁判例などをみると、1年以上の療養看護を必要とするケースが多い印象です。
5 専従性
療養看護の内容が片手間ではなく、相応の負担を要するものであることが求められます。
第4 計算方法
療養看護型の場合、以下のように、療養看護行為の報酬相当額に看護日数を乗じ、さらにそれに裁量割合を乗じて寄与分を算定するのが一般的です。
寄与分=①報酬相当額(日額)×②看護日数×③裁量割合 |
①については、介護保険における「介護報酬基準」がよく用いられます。同基準は、被相続人の要介護度に応じた介護サービスの内容や介護に要する時間などを踏まえて、報酬額を明示しています。
ただ、同基準は、あくまでもプロの看護人に支払う場合の報酬を前提としており、また、そもそも扶養等の義務を負う親族と第三者では報酬額も当然に異なってくるはずです。
そのため、寄与分の算定にあたっては、報酬相当額に一定の調整割合を乗じることになっています。これが③の裁量割合です。具体的には、0.5~0.8程度の間で適宜修正されることが多いようです。
療養看護型の寄与分でお悩みの方は、是非一度、法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
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