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推定相続人の廃除

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第1 推定相続人の廃除方法

 さまざまな理由から、推定相続人の方に遺産を残したくないと考える場合があります。

 そのような場合、推定相続人から相続資格を奪う方法として「推定相続人の廃除」(民法892条)という制度があります。
 平成24年までは、100件前後でしたが、平成25年以後、激増しており、200件を超えて増え続けています。これが認められるためには、その相続人に法律で定められた「廃除事由」があることと、法律で定められた手続きをとることが必要となります。

第2 廃除事由

 推定相続人の廃除が認められるのは、次のような一定の「廃除事由」が認められる場合に限られます(民法892条)。

【廃除事由】
①被相続人に対し虐待をした場合 
②被相続人に対し重大な侮辱を加えた場合
③その他の著しい非行があった場合 

 なお、廃除は、推定相続人の最低限度の権利として保障している遺留分を含む相続資格のすべてを剥奪する強力な効果をもつ制度です。したがって、その運用も非常に厳格です。

 まず、①「虐待」や②「侮辱」は、人的信頼関係を破壊する程度に重大なものでなければなりません。たとえば、相続人候補者が、被相続人に日常的に暴力行為に及んでおり、被相続人に対する傷害容疑で逮捕されたことがある等といった場合、①に当たる可能性があります。

 また、③「著しい非行」人的信頼関係を破壊する程度に重大なものでなければなりません。たとえば、相続人候補者が、賭博・ギャンブルを繰り返して多額の借金をし、これを被相続人に肩代わりさせ続けた等といった場合、③にあたる可能性があります。
 なお、被相続人の側に誘発責任がある場合には、廃除の事由に該当しないことがあります。

第3 廃除手続

推定相続人の廃除手続には、①被相続人が生前に行う「生前廃除」と②遺言によって行う「遺言廃除」(民法893条)があります。

1 生前廃除

 被相続人が、その生存中に推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求する方法です。廃除の相手方としては、すべての推定相続人が対象となるわけではなく、遺留分を有する推定相続人(相続人となるであろう配偶者、子、又は直系尊属)が対象となります。遺留分を有しない推定相続人に相続財産を渡したくないというのであれば、その旨の遺言を作成しておくとよいでしょう。
 請求者である被相続人は、その住所地を管轄する家庭裁判所に廃除の請求をする必要があります。

 推定相続人の廃除は、調停をすることができない事件に分類されますので、原則として審判手続として進められることになります。
 推定相続人の廃除を認める審判が確定した後は、被相続人の戸籍のある市区町村役場へ上記審判所を添付して、推定相続人の廃除の届出をすることを忘れないでください。相続後の手続きに役にたちます。 

2 遺言廃除

 推定相続人の廃除を遺言で定めておくという方法です。ただし、遺言廃除の場合、相続開始後に遺言に従って手続きをとってもらう必要がありますので、必ず遺言執行者を選任しなければなりません。
 相続開始後、遺言執行者が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、推定相続人の廃除を請求することになります。その後の手続きは、基本的には、上記①生前廃除の場合と同様です。

第4 なるべく生前に推定相続人廃除の申し立てを

 相続人廃除の遺言は、遺言書に書いただけで効力が生じるわけではありません。遺言執行者が相続人廃除の申立てをして、それが認められて初めて効力が生じます。
 ただし、上記のとおり、廃除は遺留分を含む推定相続人の相続資格のすべてを剥奪する強力な効果をもつ制度ですので、認められるためには豊富な資料を必要とします。そこで、推定相続人の廃除を検討する場合は、資料が多く残っている生前に推定相続人廃除の申立てをすることをお勧めします。

 

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