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兄弟姉妹間の相続トラブルについて

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第1 兄弟姉妹の間でも相続トラブルが起こる

 子どもの頃はそれなりに仲が良かった兄弟姉妹であっても、成人になると価値観の違いや性格の違いが出てきたり、配偶者に口出しされたりして、親の相続のときに相続争いになるケースは決して珍しいことではありません。また、子どもの頃から長い間一緒に過ごしてきた兄弟姉妹であるからこそ、積年の感情的なわだかまりが大きいこともあります。

1 疎遠になっている兄弟姉妹

 長年連絡がとれなかったり、そもそも今どこに住んでいて何をしているかも分からない兄弟姉妹が、相続をきっかけにして急に連絡をとってくることはままあることです。
 このような疎遠になっている相続人であっても、相続欠格事由があったり(民法891条)や廃除(民法892条)がなされない限り、法定相続人として遺産を相続する権利があります。

2 長男の相続分について

 昭和22年までは「家督相続」制度がとられており、前戸主に代わって戸主となった長男が全財産を相続する制度となっていました。このため、この制度を現実に見てきた高齢の方などの中には、相続の際に「実家は長男が全部相続すべき」「長男が優遇されるべき」という考えをお持ちの方もいらっしゃるようです。
 しかし、現在の民法では、ご存じのとおり兄弟姉妹間の相続分は均等です。このため、例えば、長男が家業を継いで実家に住む場合であっても、長男の相続分が他の兄弟に比べて多くなるということはありません(遺言がある場合などは別)

3 特別受益と寄与分

 相続人である兄弟姉妹のうち一人だけが、被相続人から多額の生前贈与を受け取っていたり、長期留学させてもらっていたり、医学部に6年通わせてもらっていたという事情がある場合、そのような事情を考慮しなければ、兄弟姉妹間での相続が不公平な結果になってしまう場合があります(特別受益)
 同じように、兄弟姉妹のうち一人だけ、無報酬も同然で亡くなった親の家業を手伝っていたり、介護ヘルパーのように
療養看護に専念したような場合にも、兄弟姉妹間の相続分が同じになるとすると、そのような寄与をした相続人にとって不公平な結果となってしまいます(寄与分)
 このため、相続人である兄弟姉妹のうち一人について特別受益や寄与分がある場合は、相続の際にそのような事情を考慮して相続分を決めることになります。

4 分割の難しい財産

 兄弟姉妹に限りませんが、自宅で家業をしていた場合の不動産など、分割が難しい財産がある場合があります。例えば、長男が家業を継いで自宅を相続する場合、他に特に財産がなければ、長男は自宅を取得する代わりに、他の相続人に現金(代償金)を渡さなければならない場合があります。しかし、その代償金を支払うお金がなければ、自宅を売却しなければならない場合があります。そうなると長男は家業を継続することができなくなるかもしれません。
 このような場合、兄弟姉妹間でどのような遺産分割をするかについては、兄弟姉妹間の公平や家業の存続などにも配慮しながら、十分に話し合って検討する必要があります。

5 祭祀承継の問題

 兄弟姉妹間では、お墓の管理、仏壇の管理、位牌の管理を誰かするかという祭祀承継の問題も生じます(民法897条)。昔は長男が祭祀承継者となるという考えも強かったようですが、今は長男以外の相続人が祭祀承継者となるケースも多いようです。
 誰が祭祀承継者になるかについては、慣習や管理の実態、その他の事情から判断することになります。お墓、仏壇などは遺産ではなく、遺産分割の対象とはならず、祭祀承継者が引き継ぐことになります。 

第2 異母兄弟姉妹の相続問題

 例えば、父親の前妻の子と、後妻の子がいるような場合、どのような問題があるのでしょうか。

1 父母の相続について

 例えば、父が死亡し、前妻の子と後妻の子が相続する場合は、前妻の子と後妻の子は、どちらも被相続人の子であり、子の立場で相続するため、相続分は等しくなります

2 兄弟の相続について

 例えば、兄弟が死亡し、兄弟が相続人となる場合(配偶者も親もいない場合)、父母ともに同じ兄弟の場合と、父母の一方だけが同じである兄弟(いわゆる異母兄弟など)では相続分が異なります。
 つまり、父母の一方だけが同じ兄弟の相続分は、父母ともに同じである兄弟の相続分の2分の1になります(民法900条4号但書)。
 このため、例えば、兄弟2人のみが相続人であっても、両親が同じである兄弟の相続分は3分の2、異母兄弟の相続分は3分の1となります。

3 自分が異母兄弟の立場にある場合の相続

 例えば、自分が子どもの頃に両親が離婚し、その後、父親が再婚して後妻との間にも子がいる場合の父親の相続のケースや、異母兄弟が死亡して自分が相続人となったケースが考えられます。
 この場合、被相続人と疎遠であることが多く、場合によっては相続人の氏名や住所もわからないどのような相続財産があるか全くわからないということも多いでしょう。
 このような場合、まずは戸籍謄本を取得して他の相続人の氏名や住所を調べてから、その相続人に連絡して遺産の内容を開示してもらうことになります。しかし、同じ相続人といっても関係性が希薄で、ほとんど他人というような関係であれば、心理的に自分から連絡しにくいかもしれません。そのような場合は、弁護士に依頼して、自分の代わりに相続人の調査、相続財産の調査、相続人との遺産分割の協議をしてもらうのが良いかもしれません。
 また、遺産を相続したくない、相続問題にかかわりたくないという場合は、相続放棄を検討することも一つの方法です。

4 相続人に異母兄弟がいる場合の相続

 先ほどとは逆で、例えば、父親の相続で、戸籍謄本を取って調べたところ、前妻との間に子どもがいたことが判明したケースの場合はどうしたら良いでしょうか。
 前妻との間の子で、全く音信普通である場合であっても、相続人である以上は、その相続人を含めて遺産分割協議を進めなければなりません。相続人が一人でも欠けた状態でした遺産分割協議は無効になるためです。このため、まずは異母兄弟の氏名と住所がわかったら、その異母兄弟に連絡を取り、遺産分割の話を進めたいことを申し出ましょう。
 異母兄弟であっても、相続人である以上、決められた相続分について相続する権利がありますので、普通の相続と同じようにきちんと相手に相続財産を開示して、公平に遺産分割協議を行うことが必要です。
 複雑な事情があるなどで、異母兄弟に連絡が取りにくい場合は、弁護士に依頼して代わりに遺産分割協議をしてもらうことも一つの方法です。

 

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