兄弟姉妹間の相続トラブルについて
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第1 兄弟姉妹間の相続トラブル
1 はじめに
兄弟姉妹がいるご家庭で相続についてお悩みの方は多いのではないでしょうか。
もちろん、「自分たち兄弟姉妹は仲が良いので何の問題もない。」「いざ相続となれば兄弟姉妹間で財産を等分にすれば良い。」「争いになるほどの財産がうちにはない。」などの理由から自分たちが相続でモメることはないだろうと思っておられる方も大勢いらっしゃると思います。
ただ、統計を見てみますと、遺産分割事件に関わる当事者数のボリュームゾーンは3、4人で、対象となる財産額が1000万円以下の事件も約3割存在しています(遺産分割事件等の統計データ集参照:https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/file3/80904003.pdf )。
このように、関係者数が少ない場合や、対象となる財産が非常に多いとまではいえない場合であっても、潜在的な問題から遺産分割で争いとなるケースが多く見受けられます。
遺産に不動産がある場合でも,不動産を相続したくないという方もいらっしゃいます。
不動産を相続したくないと考えるのは,次のような場合が多いようです。
2 兄弟姉妹間における相続の問題点
⑴ 疎遠だった兄弟姉妹
普段はまったく連絡がとれなかったり、そもそも今どこに住んでいて何をしているかも分からない兄弟姉妹が、相続をきっかけにして急に連絡をとってくることはままあることです。
欠格事由(法定された相続人たる地位を失う事由)が存在したり、廃除等がされていない限り、たとえ相続開始まで疎遠だったとしても、現れた兄弟姉妹が相続人であることにかわりはありませんので、法律上相続を受ける地位は認められることになります。
これに納得できない他の兄弟姉妹が話し合いの場を設けたものの、話し合いが平行線でまとまらないような場合には、一度弁護士へのご相談を検討してみて下さい。
⑵ 長男の相続分
古くは「家督相続」制度がとられていた時期もありましたが、現在の法律では兄弟姉妹間の相続分は均等です(なお、後述していますが異母兄弟姉妹間における相続分については例外です)。
そのため、長男であれば相続分が多くなる、(地域や家庭内での考え方は別論)法律上長男が家督を優先的に継ぐことができるといった制度は存在していません。
⑶ 特別受益と寄与分
被相続人(亡くなった方)から相続人に対して遺贈された財産、婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与された財産を「特別受益」と呼んでいます。
ある相続人にこの特別受益が認められると、その相続人の具体的相続分が減少することになりますので、遺産分割にあたって特別受益が主張されることがあります。
反対に具体的相続分が増加する場合として、「寄与分」が主張されることもあります。「寄与分」とは、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人がいる場合に、その寄与を評価して相続人の具体的相続分に加算される金額をいいます。
被相続人の療養看護に尽力したことなどが寄与分として考慮される行為の具体例です。
⑷ 分割の難しい財産
預貯金や簡単に換価できる財産であれば、法定相続分をお金で支払って遺産分割をまとめることも考えられます。
ただ、多くの場合問題となるのは不動産に代表される換価困難な相続財産が存在する場合です。
兄弟姉妹間における相続に限られた問題ではありませんが、どのような形で遺産分割をすることが適切か個別の事情に左右されるところが大きいため、方針について弁護士からのアドバイスをもとに検討することは有用です。
第2 異母兄弟姉妹間の相続トラブル
1 はじめに
異母兄弟姉妹間においても、すでに述べたような兄弟姉妹間の問題は起こり得ますので適宜ご参照下さい。
ただ、異母兄弟姉妹間特有の問題もありますので、以下で触れたいと思います。
2 異母兄弟姉妹間における相続分
兄弟姉妹が複数いる場合には、その人数によって相続財産を等分するのが原則です。
もっとも、法律上、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分(異母兄弟姉妹)は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とされていますので、法定相続分に基づき遺産分割をした場合には、各自の相続分に差が生じることになります。
3 異母兄弟姉妹の所在が分からない場合
異母兄弟姉妹がいることは分かっているものの、どこに住んでいるのかが分からない場合、個人でこれを突き止めるのは困難です。
その点、弁護士は依頼を受ければ、弁護士として住民票や戸籍の附票等の住所が分かる公的な書類を取り寄せることができます。
このようにして集めた住所先に相続の意思を確認する書面を送付するなどして遺産分割の手続きを進めて行くことになります。
こうした書類を集める中で把握していなかった異母兄弟姉妹の存在が明らかになる場合もありますので、相続人の調査は非常に重要といえます。
第3 結語
相続に限られた話ではありませんが、実際に争いが起きる前にご相談いただくことでスムーズに事案を解決に導ける場合は非常に多いといえます。
「争続」といわれるように様々ないさかいが生じやすい身近な法律問題だからこそ、早め早めの対応を心がけていただきたいと思います。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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