神戸・姫路の弁護士による相続相談弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ(兵庫県弁護士会所属)神戸駅1分/姫路駅1分

相続人調査の方法

 第1 はじめに

 亡くなった方(被相続人)が遺言を残していない場合、相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。そのためには、前提として、相続人が誰なのかをはっきりさせなければなりません。

 今回は、相続人調査の重要性や調査する際のポイントについて解説していきます。

 

第2 相続人調査の重要性

 相続人調査を行わずに、家族や身近な親族だけを念頭に置いて、遺産分割協議を行ってしまうということは、まま見られます。しかし、例えば、被相続人と前妻との間に子供がいたり、被相続人が過去に養子縁組をしていたりした場合には、その人たちも相続人となります。この場合、相続人全員で行っていない以上、遺産分割協議は無効となり、協議を最初からやり直さなければなりません。

 また、被相続人の銀行預金を払い戻す場合や、不動産の相続登記を行う場合も、銀行や役所に対して相続関係を証明できなければ、手続を進めることができません。

以上の理由から、相続手続を進めていく上で、相続人調査を行うことは必須といえます。

 

第3 相続人調査の方法

1 被相続人の戸籍謄本等の確認

 被相続人がいつ死亡し、誰が相続人になるのかを調査するため、まずは、被相続人の出生から死亡までの間の全ての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を取得する必要があります。

  • 戸籍謄本

 そもそも、戸籍とは、人の出生・死亡・婚姻・離婚・縁組・離縁等の重要な親族法上の身分関係を記録した公的な証明書であるところ、この戸籍原本の内容をすべて写したものを戸籍謄本といいます。本人のみならず、配偶者や子など、その戸籍に入っている全員の氏名や生年月日等が記載されています。これと似て非なるものとして、戸籍抄本というものが存在しますが、戸籍抄本は、戸籍謄本と異なり、本人の戸籍情報のみが記載されています。

  • 除籍謄本

 除籍謄本とは、戸籍に記載されている人が死亡や婚姻などの理由により全員いなくなってしまった戸籍の写しのことをいいます。被相続人が死亡により除籍されたとしても、被相続人以外の誰かが戸籍に記載されていれば、それは除籍謄本ではなく、戸籍謄本ということになります。

  • 改製原戸籍

戸籍というものは、戸籍法の改正によって、その都度、様式や記載方法が変わっていきます。現在の戸籍は、横書きでパソコンの文字が印字されていますが、法改正される前は縦書きの様式でした。さらに遡ると、手書きで作成されている時代もありました。

現在の戸籍に対して、法改正される前の縦書きの様式のものを、改製原戸籍といいます。

  • 調査方法

具体的な調査方法として、まずは、被相続人の本籍地を管轄する市町村役場において、被相続人の戸籍謄本もしくは除籍謄本を取得することになります。被相続人の本籍地が不明な場合には、被相続人の住民票を本籍地入りで取得することで、本籍地を割り出すことができます。

 ただ、その戸籍だけで、被相続人の出生から死亡まで網羅できることは少ないでしょう。

戸籍謄本(除籍謄本)を取得すると、その戸籍には、1つ前の本籍地が記載されています。そこで次に、その戸籍に記載された1つ前の本籍地の戸籍謄本等を取得します。この作業を繰り返すことで、被相続人の出生まで遡っていくのが最も効率的な方法です。

2 相続人全員の把握

 被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本等を取得することができたら、今度は、その記載内容を確認していきます。

 まずは、その戸籍謄本等の作成年月日と有効期間の記載を見て、その戸籍がいつ作られ、いつまで有効な内容だったのかを確認しましょう。

 次に、そろえた戸籍謄本等を隅々まで読んで、被相続人に婚姻歴がないか、認知した子がいないかなどを調べます。ここで見落としがあると、調査の意味がなくなってしまうので、慎重に読み解く必要があります。

 このような方法で、相続人全員を把握します。

3 相続関係図の作成

 相続人全員を確認できたら、今まで取得した情報をもとに、相続人の関係図を作成しましょう。これを作ることで、相続関係を分かりやすく整理することができます。また、相続関係図を作成しておけば、銀行や役所での申請手続や遺産分割において利用することができ、非常に有用です。

 上記2の段階で、戸籍謄本等の内容を確認しながら、都度、相続関係図を作成するという方法をとってもよいでしょう。

 これで、相続人の調査は完了です。

 

第4 終わりに

 今回は、相続人調査の重要性や具体的な調査方法について紹介しました。ただ、この記事をご覧いただければわかる通り、相続人の調査は、手間と時間のかかる厄介な作業です。

 相続人の調査をしたいが、ご自身で行うのが不安という方は、相続分野に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。