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行方不明の人がいる場合の遺産分割

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第1 行方不明の人がいる場合の遺産分割

 遺産分割協議を行う場合、相続人全員で行わなければなりません。相続人が一人でも欠けた場合は、その遺産分割協議は無効となります。では、相続人の中に行方不明の人がいる場合は、どのような方法で遺産分割を行うのでしょうか。

第2 所在を調査する

1 住民票上の住所を調べる

 まずはその相続人の行方を調査してみます。調査の方法は、まず被相続人(亡くなった人)の相続人調査のため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せるのですが、その戸籍の調査の過程で、行方不明になっていると思われる相続人の本籍地が判明します。本籍地が判明すれば、それをもとにその人の戸籍の附票を取り寄せれば住民票上の住所地が判明します。

2 手紙で連絡を取ってみる

 行方不明になっていると思われる人の住民票上の住所が判明したら、まずはその住所地に手紙を送付してみます。手紙には、被相続人が亡くなったこと、遺産分割をしたいので連絡が欲しいこと等をを書いておきます。この遺産分割により、その相続人も一定の遺産を取得できることを書いておいても良いでしょう。
 このとき書留郵便で郵送すれば、一定の情報が得られる可能性があります。書留郵便が届かなかった場合、「あて所に尋ねあたりません」「保管期間経過のため返還」など届かなかった理由が書かれて返送されてくることが通常です。「あて所に尋ねあたりません」と記載されていた場合は、その住所地に居住していないと判断された可能性があります。また「保管期間経過のため返還」であれば、実際に居住しているけれど、配達時に不在であっただけという可能性が考えられます。

3 実際に住所地の調査に行ってみる

 手紙を出したものの、その相続人から連絡がない場合には、実際に住民票上の住所地に行って調査を行います。そこの住所地に建物があるか、表札はどうなっているか、郵便ポストの状態(郵便物があふれている等)、洗濯物は干してあるか、電気はついているか、駐車場に車があるか等、その外観から、実際にその相続人が居住している可能性があるか調査します。また、隣近所に居住している人に話を聞く、管理会社の人に話を聞いたりして、その相続人がその住居地に居住しているか確認します。

第3 不在者財産管理人を選任する

 調査を行った結果、相続人と連絡が取れず、所在が判明しなかった場合は、家庭裁判所に対して不在者財産管理人選任の申立てを行います(民法25条)。家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらい、その管理人との間で遺産分割協議を行うことになります。不在者財産管理人は、弁護士などが選任されます。
 この申立書の記載例については、裁判所のホームページに記載があります。
 不在者財産管理人選任の申立書 | 裁判所 (courts.go.jp)

1 申立てを行うことができる人

 不在者財産管理人選任の申立てをできる人は、「利害関係人」です(民法25条)。遺産分割協議を行う必要のある相続人は、この「利害関係人」に当たるため、申立権があります。

2 管轄裁判所

 不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。不在者の住民票上の住所がわかっていればそのその住所、最後の居場所がわかっていればその住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。

3 申立て時に必要な書類

 申立てを行う際は、①不在者の戸籍謄本、戸籍の附票、②利害関係を示す資料(共同相続人であることがわかる戸籍謄本など)、③不在であることを示す資料、④不在者の財産に関する資料(相続財産の資料など)⑤不在者財産管理人候補に関する資料(弁護士の氏名や事務所名など)が必要となります。
 このうち、③不在であることを示す資料としては、本人が消除された住民票や、あて所に尋ねあたらずとして返送された郵便、住所地の現地調査結果の報告、近所の人や管理会社からの聞き取り結果の報告などが考えられます。
 また、自分が依頼しようとしている弁護士を不在者財産管理人候補として申立書に記載することもできます。

4 予納金

 申立てにあたっては、家庭裁判所が決める予納金を納付しなければなりません。予納金の金額は、数十万円~50万円前後と思われます。
 不在者財産管理人の報酬は、管理人の業務が終了した後、不在者の財産の中から支払われることになりますが、不在者の財産が少なく、報酬の支払いに不足するような場合には、この予納金から報酬が支払われることになります。遺産分割のために不在者財産管理人を選任する場合は、不在者が一定の遺産を取得することが見込まれます。その不在者が取得した遺産から不在者財産管理人の報酬が全額支払われる場合は、予納金は後日返金されます。

第4 不在者財産管理人との間で遺産分割協議を行う

 不在者財産管理人が選任されたら、不在者である相続人の代わりにその不在者管理人との間で、遺産分割協議を行います。このときは、相手が不在者財産管理人という違いだけで、通常の遺産分割協議と同じです。遺産分割協議が成立すれば、遺産分割協議書を作成し、不在者である相続人に代わって不在者財産管理人が遺産分割協議書に署名押印します。このとき、不在者の印鑑登録証明書の代わりに、不在者財産管理人の証明書を提出してもらいます。
 また、遺産分割協議がうまくいかなかった場合は、不在者財産管理人を相手方として遺産分割調停の申立てを行い、調停において遺産分割の話し合いを行います。
 不在者財産管理人は、家庭裁判所によって選任され、不在者のために財産管理をするため、不在者の財産を適正に確保する必要があります。このため、不在者財産管理人が、遺産分割協議を行うにあたっては、不在者の法定相続分をきちんと確保する方針で行うことになります。

第5 失踪宣告

 不在者財産管理人と似たような制度として、失踪宣告という制度があります(民法30条)。これは、不在者の生死が7年間不明の場合、失踪宣告をすることができるのですが、失踪宣告と不在者財産管理人との大きな違いは、失踪宣言がなされると、その法的効果として、不在者が法律上「死亡」したものと取り扱われることになることです。不在者が法律上死亡したものとして扱われると、今回の遺産分割における相続人が変わってくることになること、またその不在者自身についての相続が発生することになります。
 このように失踪宣告を行うと様々な点への影響が大きくなることもあることから、遺産分割のために失踪宣告を利用する場合は、よく検討してから行う必要があります。

 

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