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相続放棄後の相続人の責任

 

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第1 相続放棄について

 相続放棄を行うと、始めから相続人ではなかったとみなされます(民法939条)。このため、相続放棄を行った相続人は、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も引き継がないことになります。

 亡くなった人(被相続人)にプラスの財産以上の借金がある場合には、相続放棄を行うことを検討します。
 相続放棄をした後に相続したい遺産があることが見つかったとしても、相続放棄を撤回することは原則としてできませんので、相続放棄を行うかについては慎重に判断する必要があります。

 相続放棄をするとはじめから相続人でなかったことになるため、相続財産について何らの責任も負わないとも思えますが、以下のような財産の保存義務を負う場合があります。

第2 相続放棄後の財産の保存義務

 相続放棄をした相続人で、放棄したときに相続財産に属する財産を占有しているときは、その財産について、放棄により相続人となった人に対して財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存する義務負います(民法940条1項)。

 また、相続人全員が相続放棄をした場合は、相続財産清算人が選任されて清算人に相続財産を引き渡すまで、現に占有している相続財産について、自己の財産に対するのと同じ注意義務をもって保存する義務があります(民法940条)。

 このため、例えば、相続放棄をした時点で、自身が被相続人の預金通帳を預かっていた、不動産を管理していた等の事情があれれば、その財産を次の権利者に引き渡すまで、引き続き保存しなければなりません。

 この相続財産を保存している間に、相続財産である預金の一部を使ってしまうことなどがないように注意しましょう。

 全員が相続放棄をしたため、相続財産清算人を選任して相続財産を引き継いでもらいたい場合は、相続放棄をした人自身が「利害関係人」として、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てることができます(民法952条)。

第3 相続放棄により影響を受けないもの

1 自身の保証債務はなくならない

 相続放棄をすると、被相続人が負っていた債務は返済しなくてよくなりますが、自身が保証人になっている債務は、相続放棄をしても支払いの義務を免れることはできません。

2 生命保険は多くの場合、相続放棄をしても受け取ることができます

 生命保険の死亡保険金は、相続ではなく保険契約に基づいて支払われる受取人の固有の財産なので、相続放棄をしても原則受け取ることができます。ただし、入院給付金は受取人が被相続人となっている場合が多いため、その場合、相続放棄をすると受領する権利を失います。
 保険会社との契約次第では異なる結論になることもありますので、まずは規約を確認し、保険会社に問い合わせてください。

3 相続放棄は与信に影響しません

 相続放棄したことは、自身の与信に影響しません。このため、相続放棄をしたからといって住宅ローンが組めなくなることはありません。

4 相続放棄をしても債権者から請求される場合には

 相続放棄をしたにもかかわらず、債権者から債務を弁済するよう求められた場合には、まずは家庭裁判所から取り付けた相続放棄申述受理証明書を債権者に示して、自身が相続人ではなくなったことを主張します。それでもしつこく支払いを求められるようであれば、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。

第4 債務が残ってしまう場合には

 相続放棄をしても、連帯保証している債務が残ってしまう場合や、相続放棄ができない場合には、債務が残ってしまう場合があります。債務の支払いが難しい場合は、自己破産や任意整理、個人再生等の方法で債務整理を行うことを検討することになります。
 債務整理の可否や適切な方法については、債務整理に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。

第5 おわりに

 被相続人が債務を負っていて、預金等から返済するのが難しい場合には、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄を行うには期間制限がありますし、相続放棄を行ったほうが得なのかも見極める必要があります。
 亡くなった方の借金にお困りの方は、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。

 

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