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相続法と相続税法で取り扱いが違う場合

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第1 生命保険金について

1 相続法-遺産分割の対象外

 遺産分割の場合、生命保険金の受取人が指定されている場合(被相続人以外の者に指定されている場合)は、被相続人の遺産には含まれず、遺産分割の対象外となります。

2 相続税法-相続税の課税対象

 一方、相続税法では、生命保険金の受取人が指定されている場合でも、みなし遺産として相続税の課税対象となります(相続税法3条)。つまり、民法上は受取人の固有の財産となる生命保険金も、相続税法上は被相続人の遺産として扱われ、それを基礎として相続税が課税されることになります。  
 生命保険金については、民法と相続税法とで扱いが大きく異なっている場面で、弁護士と税理士の認識が全く違っている点になります。
 なお、生命保険の保険料を受取人が負担していた場合は、所得税の対象となります(一時所得)。

第2 死亡退職金について

1 相続法-遺産分割の対象外

 死亡退職金とは、会社の役員や従業員が死亡した際に支給される退職金で、会社の退職金規程等により遺族に支給されることが多いものです。死亡退職金の受取人が指定されている場合は、民法上は被相続人の遺産には含まれず受取人固有の財産として扱われ、遺産分割の対象外となります。

2 相続税法-相続税の課税対象

 一方、相続税法では、退職金が遺族に支給される場合でも、死亡後3年以内に支給が確定したものは、みなし遺産として相続税の課税対象となります(相続税法基本通達3-30)。

 なお「死亡退職金」という名称でなくても、今までの功績や地位を考慮して支給すれば、名称に関係なくみなし相続財産として課税対象となります。

第3 葬儀費用について

1 相続法-相続債務にはならない

 民法上は、葬儀費用は、葬儀社と契約した喪主が負担すべき費用とされています。そもそも被相続人の債務ではないので相続債務にはなりません。
 もっとも、遺産分割の実務では、相続財産から葬儀費用を控除して遺産分割を行うことも多いです。

2 相続税法-相続債務と扱われる

 相続税法上は、葬儀費用は、みなし相続債務として扱われ、相続財産から葬儀費用を控除することができます(相続税法基本通達13-4)。ただし、みなし相続債務として扱うことができるのが、①通夜と②葬儀にかかる通常の費用のみとなり、香典返礼費用や墓地の購入費用、法要に要する費用などは、みなし相続債務と認められません。

第4 不動産の評価について

1 相続法ー分割時の時価による

 遺産分割における遺産の評価は、原則的には「分割時」の「時価」によることになります評価はケースごとに判断することになります。
 「時価」の決め方は、基本的には不動産業者が作成した簡易査定などを参考にしながら、当事者の合意で決めることになります。当事者が合意できない場合は、裁判所の鑑定で決める場合があります。

2 相続税法ー相続時の路線価による

 相続税法上の遺産の評価は、「相続時」の評価額で、市街地などでは「路線価方式」により評価されます評価は、財産評価基本通達で形式的・画一的に判断され、ケースごとに評価額がまちまちにならないようにする建前となっています。
 なお、路線価は公示価格の8割程度と言われており、毎年1月1日を基準に7月1日頃に発表されます。

 

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