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「信託口」口座と「信託口」口座類似の屋号口座との違い【家族信託・民事信託】

1.「信託口」口座を開設する必要性

民事信託の受託者の多くは、親族等の個人ですので、その個人のリスク(死亡、相続、差押え、相殺、破産・認知症など)が組成した民事信託に混入することを防ぐ必要があります。

 そこで、民事信託を組成するためには、金融機関において「信託口」口座を開設することが重要となります。

 

2.「信託口」口座の要件とは

 

(1)「信託口」口座が上記の個人のリスクの混入を防ぐためには、受託者の個人口座とは異なる

託事務の代行として、信託契約書の内容に即した取扱いが行われることが重要です。

 具体的な要件としては、次の要件をいずれも満たすことが必要といわれています。

 

①預金口座が受託者の名義であり、かつ受託者の個人口座と区別する名称が付されていること
②金融機関内部において、受託者個人と分離独立したCIF(カスタマー・インフォメーション・ファイル)コードが備えられていること
③金融機関の内部手続において、個人口座とは異なる取扱いが定められていること
④個別の信託契約書の内容に即した管理が行われていること

 

(2)上記の要件「①預金口座が受託者の名義であり、かつ受託者の個人口座と区別する名称が付さ

れていること」ですが、よくある例としては、『委託者〇〇〇受託者〇〇〇(信託口)』といっ

た表記方法が多いでしょう。

また、委託者名を表記して信託を特定する場合が少なくありませんし、マイナンバーやペイオフから実質的利益帰属者である受益者名をもって信託を特定する方法もあります。

 

3.「信託口」口座類似の屋号口座

  なお、信託口口座を開設するにあたり、上記要件のうち、①は充足しているが、②~④は具備し

ていない表面上の表記だけの個人口座(「信託口」口座類似の屋号口座)に注意する必要がありま

す。「信託口」口座類似の屋号口座において、想定される具体的なリスクとしては、次のような場

合があります。

   すなわち、屋号口座は受託者の個人口座にすぎませんので、受託者が死亡した場合、相続財産として凍結されてしまうおそれや、旧受託者の相続人と信託関係者との間で、信託財産か相続財産か

をめぐって紛争が生じるおそれがあります。

 そこで、「信託口」口座類似の屋号口座を開設する場合、金融機関としては、上記②~④を具備していないこと、それによって生じる危険について、顧客に対して説明責任をつくしたうえで、説明書の交付を行い、承諾書等を取得しておくことが望ましいでしょう。

 

  残念ながら、現時点において、「信託口」口座の開設に対応していただける金融機関はまだまだ限られているようです。

 

家族信託についてご興味のある方は、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。