家族信託を弁護士に依頼するメリット
1 はじめに~家族信託とは~
家族信託とは,自分で自分の財産を管理できなくなった場合に備えて,家族に自分の財産の管理・処分を任せる仕組みのことです。「終活」の一方法として,近年では注目度が高まっています。
家族信託は,家族間の契約によって成立します。弁護士に依頼しなくても家族信託をすることは可能です。そんな中,あえて弁護士に家族信託を依頼するメリットとは何でしょうか。
2 家族信託を弁護士に依頼するメリット
(1)適切な契約内容にできる
家族信託と一口に言っても,その内容は様々です。家族信託を検討されている方は,何か目的があるはずです。「自分が認知症になって老人ホームに入ることになったら,今住んでいる家を処分してほしい」,「障害のある子どもに財産を残したい」などなど。こうした目的を達成するためにベストな家族信託を,家族信託契約で決める必要があります。
事案によっては,そもそも家族信託ではなく,別の方法を採った方がよい場合もあり得ます。弁護士であれば,契約書作成や相続にも精通していますので,事案ごとにベストな方法や契約内容をご提案することができます。
(2)遺留分対策ができる
家族信託は便利な制度ですが,遺留分を侵害し,紛争の火種になってしまう可能性があります。遺留分というのは,相続人に最低限保障されている取り分のことです。たとえば,相続人が兄弟2人の場合の相続で,遺言書に「すべての財産を長男に渡す」と書かれていても,次男は,遺留分に相当する遺産を取得することができます。
家族信託の場合も,特定の相続人にとって有利な内容にしすぎると,その家族信託が,他の相続人の遺留分を侵害しているとして,紛争になる可能性があります。せっかく将来のために家族信託をしたのに,それがきっかけで紛争になってしまっては,もったいないです。
家族信託を行う場合は,こうした遺留分対策にも気を配る必要があります。相続事件も多く扱っている弁護士であれば,当然,遺留分にも気を配った家族信託の契約内容をご提案することが可能です。「実際紛争になったらどうなるか」という見通しを立てることも可能です。
(3)家族信託が無効になることを回避できる
東京地裁平成30年9月12日判決は,ある事案において,遺留分を侵害しているという理由で,家族信託を無効と判断しました。この事案の家族信託契約は,弁護士が作成したものではありませんでした。家族信託をきっかけに,家族間で裁判にまで発展し,しかも家族信託が無効と判断されてしまっては,わざわざ家族信託をした意味がありません。
弁護士であれば,当然,この裁判例も把握していますし,この裁判例を踏まえて,無効にならない家族信託の契約内容をご提案することができます。
3 まとめ
家族信託は,家族のため・将来のために行われるものです。しかし,家族信託の内容が目的に合致していなかったり,紛争の火種になったりしては,家族信託に込めた思いが台無しになってしまいます。家族のため・将来のための家族信託を万全なものにするためにも,家族信託をご検討されている方は,ぜひ一度,家族信託に詳しい弁護士にご相談ください。