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相続税の計算方法と節税について

 1 はじめに

相続税は、相続の際に相続人の重大な関心事の一つです。場合によっては、莫大な額の相続税がかかることもあるでしょう。遺産分割の前にあらかじめ相続税について知っておくことは大切です。また、遺言書を作成するなど自身の終活を行う際に、節税方法をわかっていれば、自分の死後相続人に残せる財産を実質的に増やすこともできるでしょう。

 この記事では、相続税の計算方法と、節税について解説していきます。

2 相続税の計算方法

⑴ 課税遺産の総額を計算する

ア 相続税の課税価格の算定

 相続税の対象となるのは、基本的に被相続人(亡くなった人)が保有していたすべての財産です。これに加えて、亡くなったことによって入ってくる死亡保険金や死亡退職金等のみなし相続財産、相続開始前3年以内に贈与された財産や相続時精算課税制度を適用して贈与された財産も課税対象となります。みなし相続財産のように、遺産分割の際には遺産として扱われないものの、相続税の計算の際には相続税の対象となる財産もありますのでご注意ください。そこから、生命保険金の非課税枠など非課税財産や、債務、葬儀費用を差し引くことで、課税価格の合計額を算出します。

 課税価格の計算に際しては、故人の死亡日時点のそれぞれの遺産の価格を合算します。詳しくは割愛しますが、財産の種類によって相続税評価額の計算方法も異なります。特に不動産の場合には複雑な計算になることがありますので、場合によって専門家に相談することが必要でしょう。

イ 基礎控除額の計算

相続税の基礎控除の金額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。基礎控除の額が遺産総額を上回る場合には相続税が発生せず、相続税に関する手続きをこれ以上行う必要はありません。

ウ 課税遺産総額の算定

 遺産総額が基礎控除額より大きい場合には、「遺産総額-基礎控除額」の計算を行い、課税遺産総額を求めます。この課税遺産総額が相続税の計算対象になる財産です。

⑵ 相続税の税額の計算方法

ア 相続税の総額を計算する

 課税遺産総額を求めたら、この金額から相続税の計算を行います。ただし、課税遺産総額に相続税の税率を乗じるわけではなく、いくつかの計算を行う必要があります。

 まずは「相続税の総額」を計算し、それを各相続人が実際に相続した財産の比率によって按分します。

相続税の総額は、実際の遺産分割をどうするかによらず、遺産総額や法定相続人の数・法定相続分を用いて仮の相続税額を算出し、全相続人の仮の相続税額を合計して算出します。

各人の仮の相続税額=課税遺産総額×法定相続分×税率-控除額

を計算し、各人の仮の相続税額を合算したものが相続税の総額です。

 

(イ)個別の納付額を計算する

 相続税の合計額を求めたら、その合計額を相続人に按分し、相続人ごとの実際の納税額を求めます。個々人の相続人に按分する際には、実際に遺産相続した財産の比率によります。

各人の実際の相続税額=相続税の総額×(各相続人の課税価格÷課税価格の合計額)

 そして、各相続人の税額について、個別の事情に応じて加算や控除を行います。まず、配偶者と一親等の血族以外の相続人(法定相続人以外で遺産をもらった人も含む)の税額は2割加算します。その上で、配偶者について発生する相続税については、配偶者の税額軽減、未成年者・障碍者の控除を適用して相続人ごとの納付税額を求めます。

 配偶者の税額軽減とは、相続した遺産のうち1億6000万円または、法定相続分の半分以下の部分までは相続税が課税されない特例のことです。多くの場合で配偶者は納税が免除されますが、申告書は提出しなければなりません。

3 相続税を節税する方法

⑴ 財産の評価額を下げる

 以上の計算式からもわかる通り、遺産の総額が少なくなれば相続税の税額も少なくなります。評価額を減額するためには、不動産、中でも土地の評価額を減らすことが重要です。

 小規模宅地等の特例を適用すれば、自宅の敷地を相続する場合に、最大で相続税評価額の80%を減額できます。配偶者が自宅の敷地を相続した場合には、適用されますが、子供が相続した場合には、その子供が自身の自宅を別で持っているなど、相続して住む必要がない場合には適用されません。小規模宅地等の特例については、要件が非常に複雑ですので、適用をお考えの方は専門家に相談するのがよいでしょう。

⑵ 借入金などの債務ももれなく集計する

 被相続人が借入金などの債務を抱えていた場合、その債務の額はマイナスの財産として遺産から差し引くことができます。遺産から差し引かれるということは、結果的に相続税の対象となる金額を減らすことにつながります。

4 おわりに

 遺産分割を相続税の計算について知らなければ、遺産を相続した際に、予想よりももらえる金額が少なかったということになりかねません。また、配偶者控除や小規模宅地等の特例を知っていれば、相続税を節税することも可能かもしれません。遺言書等を作成する場合に、相続税がどのくらいかかるかを計算したほうが、各相続人が実質いくらもらえるのかを把握しておくべきでしょうし、配偶者控除や小規模宅地等の特例を知っていれば、遺言書の内容次第で相続税の価格を下げることができるかもしれません。

 相続についてお悩みの方や、遺言書の作成を考えている方は、相続に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。