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特別受益の期間制限

1  はじめに

 被相続人が、一部の相続人に対して、生前贈与を行っていた場合、その利益を「特別受益」として、相続財産に加算したうえで、具体的相続分を算定することがあります。以下では、特別受益には期間制限があるのか、遺留分の期間制限と比較しながら、詳しく説明していきます。

2  特別受益の持ち戻し

 特別受益とは、被相続人から相続人に対する、遺贈又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与のことをいいます。
 この特別受益を受けた相続人については、他の相続人と同じ相続分を取得すると、相続人間で不公平が生じるため、特別受益を被相続人の財産に加算したうえで、具体的相続分が算定されます。
 この特別受益を被相続人の相続開始時の財産に加えることを、特別受益の持ち戻しといいます。

3  特別受益における期間制限

(1)  特別受益の期間制限

 民法上、特別受益自体には、期間制限が設けられていないため、一部の相続人が受けた贈与については、何年前の贈与であったとしても、被相続人の相続開始時の財産に持ち戻すことを主張することができます。
 もっとも、特別受益の持ち戻しを主張するには、一部の相続人が贈与を受けた事実や、贈与の金額等について立証する必要があるため、事実上、数十年前の贈与を被相続人の相続開始時の財産に加えることは、立証が難しいケースが多いといえます。

(2)  特別受益の主張制限

 令和5年4月1日に施行された法改正により、特別受益については、相続開始から10年を経過した後は、原則として持ち戻しを主張できないことが規定されました(民法904条の3)。
 もっとも、以下の①②の場合には、10年の経過後であっても、例外的に特別受益の持ち戻しを主張できることが定められています。
 ①相続開始から10年を経過する前に、家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき
 ②相続開始から10年の期間が満了する6か月前までに、遺産分割を請求できないやむをえない事由があった場合において、その事由が消滅した時から6か月を経過する前に、家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき
 以上のとおり、被相続人の死亡から10年を経過した後は、原則として特別受益の主張をすることができず、法定相続分による遺産分割を行うことになりますが(民法900条)、10年経過前に、家庭裁判所に対して遺産分割調停を申し立てた場合等は、例外的に、特別受益の主張をすることが認められています。

4  遺留分算定における期間制限

 遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に対して、最低限保障されている取り分のことを言い、被相続人から生前に贈与を受けた者に対して、一定の金額を請求することができます(民法1042条)。

(1)  贈与の期間制限

 遺留分の算定においては、特別受益のうち、「相続開始前の10年間」にしたものに限り、その贈与の価格を算入することができると定められています(民法1044条3項)。
 もっとも、被相続人と贈与を受けた相続人の双方が、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、相続開始の10年以上前の贈与であっても、遺留分の算定において考慮することができるものとされています。この「損害を加えることを知って」とは、遺留分を侵害する認識があればよく、損害を与えるという加害の意図や、誰が遺留分権利者であるかを知っている必要はないものと解されています。
 また、相続人以外の者が被相続人から贈与を受けていた場合には、「相続開始前の1年間」にしたものに限られており、特別受益と比較して、さらに短い期間制限が設けられています。

(2)  遺留分の主張制限

 遺留分を請求できる期間は、相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年以内とされています(民法1048条)。

5  まとめ

 以上のとおり、特別受益については、何年前の贈与であっても、持ち戻しを主張することができますが、原則として、被相続人の死亡から10年以内に主張する必要があるため、早期に遺産分割手続を行うことが重要です。
 また、遺留分の算定においては、特別受益のうち、被相続人の死亡前10年以内にされたものに限定されており、遺留分侵害請求には1年の期間制限があるため、遺留分についても、早期に請求する必要があります。
 「特別受益の持ち戻しを主張したい」「遺留分の請求がしたい」と思われた方は、是非弁護士にご相談ください。