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認知症患者の預金を家族が引き出しやすくなるよう全国銀行協会が各銀行に通達

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第1 現在の状況

 ご家族が認知症になると、入院・通院費や介護費用など何かとお金が必要となる場面が多くなります。そして、この費用を認知症となられたご家族ご本人様名義のお金で支払いたいという場合が多いと思います。
 実際、認知症患者ご本人がお金をたくさん持っていらっしゃるケースが多く、第一生命経済研究所の試算では、認知症患者が保有する金融資産額は2030年頃にはなんと215兆円に達するとの見通しです。

 しかし、いざ銀行の窓口でご本人以外の方がご本人名義の口座からお金を引き出そうとしても、窓口に来られた方がご家族であろうが、ご本人様の入院費だと主張しようが拒否されることがほとんどでした。

第2 全国銀行協会からの通達

 全国銀行協会は、2021年2月18日、認知能力が低下した高齢者や、その代理人との金融取引を行う場合の参考となるよう、金融取引の代理等に関する考え方等を取りまとめたものを発表しました。

 全国銀行協会の記事
 全国銀行協会による資料

 これについては、各銀行に対して一律の対応を求めるものではなく、個別の状況によって異なる対応が取られるケースもあるということです。

 その概要は、次のとおりです。

1 認知判断能力が低下した顧客本人との取引

 認知判断能力が低下した本人との取引については、親族等に成年後見制度等の利用を促す。
 成年後見制度の手続が完了するまでの間、やむを得ず金融取引を行う場合は、本人のための費用の支払いであることを確認するなどした上で対応することが望ましい。

2 代理権がない親族等との取引

 本人の認知判断機能が低下し、かつ成年後見制度等を利用していない場合、まずは成年後見制度等の利用を求める
 成年後見人等が指定された後は、親族等からの払出し依頼には応じず、成年後見人等からの払出し依頼を求めることが基本である。

 本人の医療費等の支払い手続を親族等が代わりにする行為など、本人の利益に適合することが明らかである場合に限り、依頼に応じることがある。 
 預金が僅少となり、本人の医療費や施設入居費、生活費等の支払いを行うために、親族等から本人の保有する投資信託等の金融商品の解約等の依頼がある場合は、やむを得ず対応する場合がある。ただし、投資信託等の金融商品は、価格変動があることから、商品の解約についてはより慎重な対応が求められる。

 また、一般向けへの案内資料も公開されています。この資料によりますと、以下のものをそろえて各銀行に相談に行くと、認知症患者自身の明確な意思が確認できなくても、ご本人の口座からの引き下ろしに対応してもらえる場合があるようです。

  •  (1)預金者ご本人の①通帳、②キャッシュカード、③銀行届出印
  •  (2)来店者の①本人確認書類、②預金者ご本人との関係性がわかる書類(戸籍抄本など)
  •  (3)お金が必要な理由がわかる資料(入院や介護施設費用の請求書など)

第3 継続的に預金の引き出しをする場合は成年後見制度の利用を!

 以上のように、家族による引き出しができるようになりましたが、あくまでこれは入院費用などに限定されていて、一時的な手段にすぎません。

 継続的に預金の引き出しを希望される場合は、成年後見制度のご利用をご検討ください。成年後見制度については、以下のページで詳しく解説していますのでご参照ください。

成年後見制度

 

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