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海外に財産がある場合の相続

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 海外に遺産がある場合、日本国内にある資産・財産と取り扱いが異なる可能性があります。このように海外の財産を相続するケースを「国際相続」ともいいます。

第1 国際相続が発生する時

そもそも国際相続が発生する海外資産は具体的にどのようなものを指すのでしょうか。

1 海外不動産

 被相続人が海外に不動産を所有しているケースです。
 最近は海外不動産投資などを行う人も増えており、親が亡くなったときに「実はアメリカやフィリピンなどに不動産を所有していた」という事実が発覚する例も少なくありません。

2 海外預金

 海外に被相続人名義の預金口座があるケースも考えられます。
かつて海外居住していたことのある方、定年退職後に海外移住して生活していた方などは海外に預金口座を持っている可能性が高いです。
相続が発生したとき、預金口座の解約や名義変更などが必要となります。

3 海外動産

 被相続人が海外に骨董品や絵画などの動産を所有しているケースも考えられます。例えば,被相続人が海外に居住していた場合,現地の居宅内に価値のある動産があれば,そういったものは海外資産として遺産相続の対象になります。

 

第2 海外資産の相続における準拠法

 相続人の遺産の中に海外資産が含まれていて国際相続をするケースでは、どの国の国際私法に基づきどの国の相続法(準拠法)が適用されるかを確認する必要があります。

 まず、国際私法というのは外国人が登場する法律関係や外国において発生した法律関係についてどの国の法律(準拠法)を適用すべきかを定めた法律であり、各国において定められ、その内容はそれぞれ異なります。

 日本の国際私法のひとつとして重要なのが「法の適用に関する通則法」(通則法)です。

法の適用に関する通則法

 この法律が相続問題において適用されるためには、被相続人の最後の住所地または遺産所在地が日本である必要があります。

 次に、準拠法というのは、当該国の国際私法により、当該外国関係の法律関係について適用されるべきであるとされた国の当該分野の法律です。

 相続分野の法律関係について、どの国の法律が適用されるかをみると、通則法第36条に「相続は、被相続人の本国法による」と定められています。
 このため相続人の本国法(その人が国籍を有する国の法)が適用されることになります。

 なお、被相続人が二重国籍を有する場合には、国籍国のうち、
①被相続人が常居所(「人が相当長期間にわたって居住する場所」などと定義されます)を有する国があるときはその国の法を
②被相続人が常居所を有する国がないときは被相続人にもっとも密接な関係がある国の法を被相続人の本国法とします。
 ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を被相続人の本国法とするものとされています(通則法第38条)。

1 海外不動産の場合

 被相続人の最後の住所地または遺産所在地が日本である場合の相続問題については、原則として日本の相続法が適用されることになります。

 海外に所在する不動産の場合、不動産については特別に「所在地の国の法律を準拠法とする」とする国があるため被相続人の本国法が適用されるとは限りません。
このように不動産とそれ以外の資産の取扱いを分ける方法を「相続分割主義」といいます。

 例えばアメリカやイギリス,フランスや中国などでは「相続分割主義」がとられるので,不動産についてはその所在地の国の法律が適用されます。

 他方、日本などすべての遺産について統一的に相続処理を行う国を「相続統一主義」といいます。
同じ相続統一主義でも「被相続人の本国」を基準とするパターン、「被相続人の最終の住所地」を基準とするパターンがあります。

2 不動産以外の海外資産の場合

 不動産以外の海外資産の場合、原則どおり被相続人の本国法が適用されます(通則法第36条)。

 以上のように,被相続人が日本人以外の場合や日本人であっても海外不動産を所有していた場合,相続時にさまざまな国の法律が適用される可能性があります。

 したがって、遺産分割に際しては正確に準拠法を確認し、適用される法律の内容を詳しく調べる必要があります。

第3 遺言書がある場合について

国際相続において、遺言書が有効になるのは以下のケースとなります。

被相続人が遺言の成立または死亡の当時国籍を有した国の法律上の要件を満たす
被相続人が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した国の法律上の要件を満たす
遺言作成時が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した国の法律上の要件を満たす
遺言書が作成された国の法律上の要件を満たす
海外不動産の場合、不動産が所在する国の法律上の要件を満たす

 このように、日本法では遺言の要件を満たさなくても「遺言作成時の住所地の法律」や「不動産の所在地の法律」などの国の法律の要件を満たせば遺言が有効になる可能性があります。
日本では認められていませんが、国によっては「録音方式」が認められているケースもあります。
 そういった法律が適用されれば、日本では無効となる遺言も有効になる可能性が発生します。

 したがって、国際相続の事案で遺言が残されていたら、遺言の「準拠法」を調べた上でその有効性を確認しなければなりません。

第4 海外資産の相続手続について

 海外に相続財産があり,現地の法律が適用される場合,日本の相続手続とは大きく異なることがあります。国によってはプロベートといわれる検認裁判が必要になることもあります。

1 プロベートがない国について

 日本を始めとして多くの国ではプロベートという手続はありません。
 このため、日本のように遺産分割協議を行い、相続人全員の署名押印がある遺産分割協議書を作成し、それに基づいて相続財産を相続人間で分配して相続手続終了となります。

2 プロベートがある国について

 プロベートとは、裁判所の関与のもとに遺産相続手続を進めるものです。
 裁判所が「人格代表者」を任命し、人格代表者が相続財産の調査や確定、負債の支払いや税金申告等を行います。
 最終的に裁判所が相続財産の分配について許可を出したときに相続人らが海外資産を受け取ることができます。検認裁判には現地の弁護士の関与が必須になるので、費用や時間(おおよそ1年から3年間)がかかります。

 もっとも、プロベートを回避できる方法もあります。例えば、共同保有という保有形態をとることです。この他にも生前に次の所有者を決めておく信託という方法もあります。

第5 海外資産の相続税について

 海外資産を相続する際に相続税がかかるかは、被相続人と相続人の国籍や住所によって取り扱いが異なります。
 日本の相続税は、国内財産・海外財産にかかる分を合わせて亡くなった方の住所地の税務署に申告・納税します。
 アメリカでは、日本の相続税に類似した遺産税というものがあります。日本に居住している者はアメリカから見て非居住者となりますが、この場合アメリカ国内の財産が課税対象になります。

 海外でも日本でも二重で相続税がかかる場合、その二重課税部分については申告をする中で調整することはできます。これを外国税額控除といい、海外財産について海外で支払った税金と日本で支払うべき相続税額の内海外財産にかかる部分のいずれか少ない金額を控除できます。

第6 まとめ

 以上のように相続財産に海外財産が含まれている場合,日本とは異なった複雑な相続手続をしなければならない可能性があります。
 ご家族の方で海外財産を所有されている方がいらっしゃいましたら一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

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