連絡の取れない相続人がいたときの対処法
第1 遺産分割では相続人全員の同意が必要
遺産分割は、相続人全員の同意がなければ成立しません。そのため、連絡が取れない相続人がいたときには、遺産分割が成立せず遺産が相続人全員の共有状態のままとなってしまいます。
第2 相続人の住所が分からない場合は
相続人の住所が分からない場合、どのようにして住所を調べたら良いでしょうか。この場合、被相続人の戸籍から相続人の戸籍を調べ、相続人の戸籍の附票を取得して調べます。戸籍の附票には、これまでの住所が記載されているため、相続人の現在の住所を知ることができます。
相続人がそもそも相続が生じていることや自分が相続人であることを自体認識していない場合もあります。このため、相続人の住所宛てに手紙を郵送し、相続が生じていて遺産分割が必要なことを連絡してみます。
第3 失踪宣告制度、不在者財産管理制度について
相続人の中に行方不明の者がいる場合には、どうすれば良いでしょうか。この場合、家庭裁判所に対し、失踪宣告又は財産管理人の選任の申し立てを行うことが考えられます。
1 失踪宣告制度について
失踪宣告とは、生死不明の者について法律上死亡したものとみなす制度です。具体的には、不在者の生死が7年間明らかでないときに、家庭裁判所に対して失踪宣告の申立てを行います(普通失踪)。また、危難が原因で生死が不明となった場合(戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難)は、その危難が去った後その生死が1年間明らかでないときに失踪宣告の申立てを行うことができます(危難失踪)。
裁判所ウェブサイト https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_06/index.html
家庭裁判所で失踪宣告がなされると、その人物は法律上死亡したものとみなされる結果、相続人でなくなるため、そのことを前提に相続手続きを進めることができます。
2 不在者財産管理制度について
不在者財産管理制度とは、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に、家庭裁判所が申立てにより不在者の財産管理人を選任する制度です。
不在者財産管理人に選任された人(弁護士その他)が、不在者の財産を管理する権限を有し、行方不明となっている相続人に代わって不在者財産管理人が遺産分割を行います。
裁判所ウェブサイト https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_05/index.html
3 失踪宣告制度と不在者財産管理制度の関係
長年行方不明となっている相続人がいる場合、失踪宣告と不在者財産管理人のどちらの申立てをすれば良いでしょうか。
失踪宣告が認められた場合、行方不明となっている人が法律上死亡したものとみなされ、その行方不明となっている人自身の相続が発生することになります。失踪宣告による相続発生により、予期せぬ影響を受けることも考えられるため、失踪宣告を行う場合は慎重に判断する必要があります。
このため、まずは不在者財産管理人選任の申立てを行って財産管理人を選任し、その後、不在者が死亡していると思われる場合に、失踪宣告を申し立てるという方法も考えられるところです。
第4 遺産分割の調停及び審判
相続人の所在が判明しても当該相続人が遺産分割協議に応じない場合には、家庭裁判所に対して遺産分割調停の申し立てを行うことが考えられます。調停でも、遺産分割協議と同様に相続人全員の同意がなければ、遺産分割が成立しませんが、調停は裁判所という第三者機関が介入することによって、これまで遺産分割に応じてこなかった相続人が話し合いに応じてくることが期待できます。
また、相続人が調停に出席しなかったり、調停での話し合いが折り合わず、調停が不成立となった場合には、審判手続に移行し、家庭裁判所の審判によって遺産分割の内容が決められます。
第5 被相続人の遺言が存在していた場合
以上の場合と異なり、被相続人が遺言書を残していた場合には、基本的には、その遺言書の内容にしたがって相続することになります。もっとも、遺言書に書かれていない遺産がある場合や、相続割合しか指定されておらず、個々の土地や建物といった被相続人の財産を具体的にどのように分けるか遺言書で定められていない場合などは、遺産分割をする必要があります。
第6 まとめ
連絡の取れない相続人がいたとき、どのようにして遺産分割を進めていったらよいのか悩まれると思います。ここまで述べた手続きをご自身で進めるとなるとかなりの時間と労力を費やすことになるため、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
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