抵当権付きの不動産の評価はどうするか
遺産である不動産に抵当権(担保)が設定されている場合、その不動産の評価はどのような方法で行うのでしょうか。
すなわち、この場合、不動産の本来の時価から借金(被担保債務)の額を差し引いて評価することになるのでしょうか。
この点については、誰の借金であるかということと、また遺産分割の手続が調停か審判かによって扱いが変わることになります。

亡くなった方の借金だった場合
例えば、亡くなった人の住宅ローン債務を担保するために、不動産に抵当権が設定されている場合はどうでしょうか。
✔ 調停の場合(協議の場合も)
亡くなった人の借金(債務)は、法律上は、相続開始と同時に法定相続分によって当然に分割されるのが原則です。
ですが、これを貫くと、不動産を相続しない相続人も住宅ローンを負担することになってしまい不都合が生じます。不動産を相続する人が住宅ローンも引き継ぐというのが一般的であると思われます。
このため、遺産分割協議や調停における話し合いをする場合の一つの方法として、不動産の評価額から借金の額を差し引いて評価するという方法を取ることもあります。
すなわち、その不動産を相続する相続人が「自分がこの借金を全額返す」ことを約束することを条件に、不動産の評価額から借金額を差し引いて評価するという方法を取ることができます。
✔ 審判の場合
協議や調停での話し合いがまとまらず、審判になった場合(遺産分割について裁判所が判断する場合)はどうなるのでしょうか。
この場合は、原則として、不動産の評価額から借金を差し引いて評価するということはありません。
というのは、遺産分割の対象となるのはプラスの財産のみ(この場合は不動産そのもの)であり、住宅ローンなどのマイナスの財産は、相続開始と同時に法定相続分の割合によって当然分割されるためです。
このため、審判の場合は、特別な事情や相続人間の合意がない限り、不動産の評価については借金はないものとして不動産そのものの価値で評価されることになります。
第三者の借金だった場合
これに対し、第三者の借金のために、亡くなった方が自分の不動産を担保にしていた場合はどうなるのでしょうか。
例えば、亡くなった人が、自分が経営していた会社の借金の担保として自宅に抵当権を設定していたような場合です。
この場合の不動産の評価については、その第三者に「借金を支払う能力があるかどうか」が重要なポイントになります。
もし、その第三者(例えば会社)に十分に資産がある場合、その借金はその第三者が返済する可能性が高いと思われます。
このため、不動産の評価をするにあたっては、その借金は考慮しなくても良いということになるでしょう。
これとは逆に、その第三者に借金の支払能力がないと思われる場合は、その借金の存在を考慮する必要が生じます。
というのも、その第三者が将来借金を返済できなくなった場合、せっかく遺産分割で不動産を取得しても、それを売却しなければならなくなるかもしれないためです。
このため、その第三者に借金の支払能力がない場合は、不動産の時価から借金を差し引いて評価するのが妥当であると思われます。
しかし、この点については、明確なルールがある訳ではなく学説も対立しているところです。
このため、このような場合は、第三者の支払い能力の有無などを考慮しながら、個別具体的に考慮していくことになるでしょう。










