義両親の遺産相続において知っておくべき権利と手続き
第1 義両親について相続について
義両親の相続に関して、「自分にも相続権があるのか」「義両親の遺産を受け取る方法はあるのか」というご相談をよく耳にします。
特に、長年にわたって義両親の介護をしてきた場合や、経済的に貢献してきた場合には、義両親の遺産を受け取りたいと思われる方も多いでしょう。本記事では、義両親の遺産を相続する方法や手続きについて詳しく解説します。
第2 義両親の遺産を相続する方法
結論としては、義理の両親についての相続権はありません。法定相続人となることができるのは、実子または養子のみとなります。では、義両親の遺産を相続する方法はあるのでしょうか。
① 遺言による遺贈:義両親が遺言で財産を譲渡する場合
義両親が生前に遺言を作成して、義理の息子または娘(実子の配偶者)に遺産を相続させる旨を遺言に記載すれば、義両親の遺産を相続することができます。
もっとも、この場合は、義両親が自分の意思でそのような内容の遺言を作成する必要があります。このため、義両親がそもそも遺言書を作成してくれなかったり、義両親が認知症になっていて遺言書を作成する判断能力がないような場合は、この方法を利用することはできません。
② 養子縁組:法的な親子関係を構築することで相続権を得る方法
次に、義両親と養子縁組をする方法があります。養子縁組を行うと、その効果として法律上の親子関係が生じますので、法定相続人(子)として義両親の遺産を相続することができます。
養子縁組を行うには、養子縁組届出を市区町村役場に提出することが必要です。
また、養子縁組をする場合は、双方に養子縁組をすることの意思が必要になりますので、義両親が養子縁組をすることに反対していたり、認知症の影響などにより養子縁組をすることについての判断能力がない場合は、この方法を利用することはできません。
また、養子縁組を行うと法律上の親子関係が生じますので、親子として法律上の扶養義務(民法877条1項)を負うことになります。
③ 特別寄与料の請求:介護や貢献に対する金銭的補償を求める制度
2019年の民法改正により「特別寄与料」の制度が導入され、この制度を利用して、義理の子(息子又は娘)の立場で、特別寄与料を請求することができるようになりました(民法1050条)。
民法 第十章 特別の寄与 |
これは、義両親に対して無償で療養看護やその他の労務の提供をした親族が、相続開始後、相続人に対して金銭の支払いを請求することができる制度です。
この制度を利用して特別寄与料を請求できるのは、被相続人の親族が「無料で療養看護その他の労務の提供をした」こと、それによって「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」ことが必要とされています。このため、単に親族として被相続人の通院等の手伝いをしたという程度では、この要件に当てはまらない可能性があります。
またこの特別寄与料を請求することができる期間も短く、「相続の開始及び相続人を知ったときから6か月以内」「相続開始時から1年以内」という期間制限があります。
このため、特別寄与料を請求したいと考える場合は、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。
第5 ケース紹介
事例1:遺言による遺贈を受けたケース
Aさんは長年、義両親と同居しながら介護を行っていました。義父が公正証書遺言を作成し、Aさんに自宅を遺贈すると記載していたため、義両親が亡くなった後、自宅を受け取ることができました。
事例2:養子縁組により相続権を得たケース
Bさんは、義母と養子縁組を行い、法定相続人として正式に認められました。その結果、他の兄弟と同等の割合で遺産を相続することができました。
事例3:特別寄与料を請求したケース
Cさんは義両親の介護を無償で10年以上行っていました。これによって訪問介護等のサービスを受ける必要がなくなり、義両親の資産が目減りせずにすみました。義両親の死後、特別寄与料の請求を行い、相続人である義兄弟から介護の貢献に対する金銭的補償を受けることができました。
第6 義両親の遺産相続をするには
基本的には、義両親の遺産について相続する権利はありません。このため、義両親の遺産を相続するためには、以上の3つのような方法を取る必要があります。
・ 有効な遺言の作成について専門的なアドバイスが必要な場合
・ 養子縁組を検討しているが、法的な影響が心配な場合
・ 特別寄与料の請求を行いたいが、相続人との交渉が難航している場合
このような場合には弁護士に依頼することで、最も適切な方法を選択し、円滑に手続きを進めることができます。義両親の遺産相続をご希望される方は、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。