小規模企業共済金は遺産に含まれるか
第1 小規模企業共済とは
被相続人が個人事業主や会社経営者・役員であった場合に、小規模企業共済に加入していることがあります。
小規模企業共済は、個人事業主や会社経営者等にとって退職金制度のような役割があり、廃業時や死亡時にこれまでの積み立てに応じた共済金が支給されます。この小規模企業共済の掛金は、所得から控除することができることから、節税ために小規模企業共済に加入する人も多いです。
第2 小規模企業共済は遺産に含まれるか
被相続人が小規模企業共済の共済金を受け取らないまま死亡した場合、小規模企業共済金は、被相続人の遺産として遺産分割の対象となるでしょうか。
小規模企業共済金は、民法上は被相続人の遺産には含まれず、受給することができる遺族の固有の権利となります。このため、小規模企業共済の共済金は、遺産分割の対象とはなりません。
また、小規模企業共済は遺産ではないため、相続放棄をした場合であっても、受給権があれば共済金を請求することが可能です。
第3 共済契約者の死亡に伴う受給権者の範囲と順位
小規模企業共済法10条において共済金を受給することができる遺族が定められています。具体的には、以下の順位で受給権があります。なお、同順位の遺族が複数いる場合は、人数によって等分して支給されます(同条3項)。
第1順位 配偶者
第2~第7順位
共済契約者が亡くなった当時、主としてその収入によって生計を維持していた親族(以下の順:②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹、⑦その他の親族)
第8順位~
共済契約者が亡くなった当時、主としてその収入によって生計を維持していなかった親族(以下の順:⑧子、⑨父母、⑩孫、⑪祖父母、⑫兄弟姉妹、⑬ひ孫、⑭甥・姪)
第4 受給権者が複数いるとき
同じ順位の受給権者が2人以上いる場合、「共済金の受領に関し一切の権限を有する代理人を一人定め、その者によって請求しなければならない」とされています(小規模共済法施行規則10条5項)。ですが、例えば、遺産分割で、兄弟姉妹間でもめている場合に、相続人で協力して受給手続を行うことが難しい場合もあるでしょう。
このような場合、「中小機構が代理人一人を定めることができないやむを得ない事情があると認めたときはこの限りではない」(同項但書)と定められていますので、例えば、遺産分割をめぐって紛争状態にあるために代理人を定める協議が整わないなどの事情を説明して、代理人一人を定めることなく共済金を請求できるように求める方法が考えられます。
第5 税法上の扱い
小規模企業共済の共済金は、民法上は受給権者である遺族の固有の権利であり、遺産分割の対象とはなりません。ですが、税法上はみなし相続財産として相続税の課税対象となります。この点、民法上の取扱いとは異なりますので注意が必要です。