海外在住者がいる場合の遺産分割
第1 相続人全員で遺産分割をする必要がある
遺産分割は、法定相続人全員で行う必要があります。相続人の誰かが欠けた状態で遺産分割を行ってもそれは無効となります。
このため、法定相続人の一人が海外にいる場合であっても、その相続人を含めて遺産分割をする必要があります。では、海外在住の相続人がいる場合、どのような方法で遺産分割を行うのでしょうか。
第2 代理人に依頼する方法

海外在住の相続人に弁護士に依頼してもらい、代理人となった弁護士が代わりに遺産分割の協議等を行うという方法があります。この方法が最もスムーズな方法かもしれません。
代理人となった弁護士は、海外在住の相続人とメールや電話、zoom、WhatsApp等を使って打合せを行い、遺産分割についてのご本人の意向を聞き取って、ご本人に代わって遺産分割の話し合いを行います。
また、遺産分割調停の場合でも、海外在住の相続人が日本の弁護士に依頼して代理人とすることで、ご本人が家庭裁判所に出向くことなく遺産分割調停を成立させることが可能です。最近は、家庭裁判所でもWEB会議の方法で調停を行っていますが、海外からWEB会議に参加することは裁判所の取扱いではできないようです。
家庭裁判所からの書類も、ご本人に代わって代理人の弁護士が受け取ることになります。
第3 代理人に依頼しない場合

上記のとおり、海外在住の相続人の方には、弁護士に依頼してもらうという方法がスムーズなのですが、代理人に依頼しないという場合はどうすれば良いのでしょうか。
遺産分割の話し合いをする場合、必ずしも相続人全員が一堂に会して話し合いを行う必要はありません。このため、例えば、日本にいる相続人間である程度遺産分割の話し合いを行ってから、海外在住者の方にメールなどで連絡し、遺産分割の内容について合意をしてもらうという方法が考えられます。
また、遺産分割協議が成立した場合は、遺産分割協議書を作ることになりますが、遺産分割協議書には、実印を押印して印鑑登録証明書を添付する必要があります。海外在住者で日本に住民登録がない場合は印鑑登録証明書が取得できないため、その代わりに現地の大使館などの公的機関でサイン証明書を取得することが必要となります。
第3 海外在住の相続人と連絡が取れない場合

何十年も前に海外に行ったまま連絡が取れなくなった相続人がいる場合はどうすればよいのでしょうか。
このような場合は、不在者財産管理人の選任申立てをし、選任された不在者財産管理人との間で遺産分割協議を行うことが可能です。なお、「不在者」とは「従来の住所又は居所を去った者」をいい(民法25条1項)、一時的な不在である場合やメールや電話で連絡が就く場合は、「不在者」には当たりません。
法定相続人の中に海外在住者がいる場合や、海外在住のまま遺産分割に参加されたい法定相続人の方は、遺産分割の手続をスムーズに進めるためにも一度弁護士にご相談されることをおすすめします。










