遺産分割調停とは?申立て前後の流れを弁護士が解説
第1 初めに
被相続人が亡くなった場合、相続人全員で遺産分割を行う必要があります。
協議で話がまとまればよいのですが、まとまらなかった場合には、裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停の中で解決を図ることになります。
そこで今回は、遺産分割調停の流れや、弁護士に依頼すべき理由について、解説していきます。
第2 遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、裁判所で行われる遺産分割の話し合いのことをいいます。
相続人間での話し合いという意味では、遺産分割協議と変わりません。もっとも、遺産分割調停では、裁判官や調停委員が間に入って、各相続人の主張や意向を聞き取り、話し合いがまとまるように調整してくれます。
そのため、遺産分割協議よりも遺産分割調停の方が、話がまとまりやすいといえるでしょう。
第3 遺産分割調停の流れ
1 遺産分割調停を申し立てる
遺産分割調停をするためには、まず裁判所に対して遺産分割調停の申立てを行う必要があります。
申立ては、裁判所に口頭で伝えればよいといわけではなく、調停申立書を作成する必要があります。また、被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本等の資料もあわせて準備しなければなりません。
必要書類については、裁判所が下記ホームページで公開していますので、ご参照ください。
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html
申立先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所とされています。最寄りの裁判所に申立てをしても基本的には受け付けてもらえませんので、ご注意ください。
もっとも、相手方が複数いる場合には、そのうちの一人の住所地を管轄する裁判所を選んで申し立てることができますので、自分が一番出席しやすい裁判所を選ぶとよいでしょう。
なお、管轄権のない裁判所へ調停を申し立てた場合、通常は管轄権のある裁判所へ事件が移送されますが、事案によっては、管轄権のない裁判所が自ら処理することが認められる場合があります。これを「自庁処理」といいます。
自庁処理が認められる例としては、被相続人の最後の住所地で遺産の所在地に居住している申立人が、相手方の住所地ではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に調停申立てをした場合などが考えられるでしょう。
2 第1回調停期日まで
無事申立書が受理されると、裁判所から申立人以外の相続人全員に対して、第1回調停期日の通知がなされます。
第1回調停期日は、申立書が受理された後、約1か月後に設定されることが多いです。
3 第1回調停期日
期日当日、裁判所で受付を済ませると、待合室に案内されます。調停の開始時間になると、調停委員が待合室に呼びに来ますので、指示に従って調停室へ移動しましょう。
調停では、当事者が一堂に会して話し合いを行うことはほぼなく、申立人と相手方が交互に調停室に入って、調停委員2名(基本的に男女1名ずつ)と話をすることになります。
第1回調停期日では、申立人から調停室に入り30分程度、調停委員と話をします。初回は、相続人の確認、遺産の確認、申立てに至った経緯、相手方との対立点、遺産取得の意向など、おおまかな事情を調停委員から聞かれます。話が一通り終わると、申立人は一旦退室し、今度は相手方が入室して、30分程度、調停委員と同様の話をすることになります。
相手方の話が終わると、相手方が退室し、再び申立人のターンがやってきます。このような申立人→相手方という流れを2回程度繰り返して、その日の調停は終了となります。所要時間としては、2時間程度かかることが多いです。
調停終了時には、調停委員より、次回の調停期日までに準備しておく資料や書類等を指示されますので、忘れないようメモをして準備を進めましょう。
4 第2回期日以降
第1回調停期日の後は、おおむね1カ月~1カ月半に1回のペースで調停期日が設定されます。第2回期日以降も、流れは同じで、30分ずつ申立人と相手方が交互に調停委員と話をして、争点を整理していきます。
具体的には、以下の流れで進んでいきます。
①相続人の範囲を確定する
②遺産の範囲を確定する
③遺産を評価する
④特別受益・寄与分を確定する
⑤遺産の分割方法を確定する
特別受益とは、被相続人から遺贈又は生前に贈与を受けた相続人がいる場合には、当該遺贈等の額を考慮して相続分を決めようという制度です。他方、寄与分とは、被相続人の財産の維持又は増加に貢献した相続人がいる場合(家業の手伝い、療養看護等)には、その貢献度を考慮して相続分を決めようという制度です。いずれも、相続人間の不公平を調整するための制度です。
遺産の分割方法としては、現物分割(遺産そのものを分ける)、換価分割(遺産を売却して得られた金銭を分ける)、代償分割(遺産を取得した相続人が他の相続人に代償金を支払う)などがあり、分割方法まで合意した時点で初めて調停が成立します。
5 調停の成立・不成立
上記①から⑤まで話し合いが進んでいき、相続人全員が、遺産の分割方法に合意すれば、調停成立となります。
反対に、話し合いを続けても妥協点を見つけられない場合や、調停への出席を拒む相続人がいる場合、調停不成立となります。
この場合、自動的に遺産分割審判へと移行します。審判では、裁判官が当事者から提出された主張書面や証拠書類などを確認した上で、妥当な遺産分割方法を決めて、当事者に言い渡します。
第4 遺産分割調停は弁護士に依頼すべき
遺産分割調停は、弁護士に依頼せず自分で対応することも可能です。しかし、以下の理由から、弁護士に依頼するのが望ましいといえるでしょう。
・煩雑な手続から解放される
遺産分割調停を申し立てる場合、申立書のほか、財産資料や戸籍謄本など、様々な資料を取り寄せる必要がありますが、これを一から行うのは非常に大変です。
弁護士に依頼すれば、申立手続を一任することができますので、負担はかなり軽減されるでしょう。
・弁護士が調停に出席してくれる
弁護士に依頼すれば、調停期日には弁護士も出席いたしますので、調停委員とのやり取りをスムーズに行うことができます。
また、日程があわず自分が出席できない場合でも、弁護士が出席すれば調停を進めることが可能です。
・遺産分割を有利に進めることができる
遺産分割調停では、遺産の評価(特に不動産)や特別受益・寄与分の額をめぐって争いになることがよくあります。
そのような場合でも弁護士に依頼すれば、法的根拠に基づいて適切な主張立証をしてくれますので、遺産分割を有利に進めることができます。調停委員を味方につけ、相手方を説得するためにも弁護士をつけるのは有用といえます。
第5 終わりに
今回は、遺産分割調停の全体像をご説明しました。前述の通り、遺産分割調停を自分一人で対応するのはなかなか難しく、手続を有利に進めるためにも弁護士に依頼するのがおすすめです。
遺産分割調停をご検討されている方は、ぜひ一度相続分野に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
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