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遺産分割調停はどこの裁判所で行われるのか

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第1 初めに

 相続人間での遺産分割協議がまとまらない場合、解決のためには、遺産分割調停の申立てを裁判所に行う必要があります。
 では、申立先は、最寄りの裁判所でよいのかというと、そういうわけではありません。
 遺産分割調停を行うことができる裁判所(=管轄裁判所)については、法律に定めがあり、これを無視して申し立てようとしても、受け付けてもらえない可能性があります。
 そこで今回は、遺産分割調停の管轄や管轄裁判所が遠方の場合の対処法について、解説していきます。

第2 遺産分割調停の管轄

1 原則

 遺産分割調停の管轄裁判所は、原則として相手方の住所地の家庭裁判所とされています。そのため、被相続人の最後の住所地や、申立人の住所地の裁判所に申立てをしても基本的には受け付けてもらえません。
 ただ、相手方が複数いる場合には、そのうちの一人の住所地の裁判所を選んで申し立てることができます。
 例えば、申立人が東京都、相手方3名がそれぞれ北海道、神奈川県、沖縄県に住んでいる場合、東京家庭裁判所に申し立てることはできませんが、横浜家庭裁判所に申し立てることはできます。
 相手方の住所は分かっているが、管轄裁判所が分からないという方もおられると思います。そのような場合には、裁判所が運営する下記ホームページにアクセスしてみてください。それでも分からない場合には、裁判所に直接聞いてみることをおすすめします。
 https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html

2 例外

 相手方の住所地の裁判所以外でも、場合によっては管轄が認められることがあります。それが、①管轄合意②自庁処理の2つの場合です。
 ①管轄合意とは、その名の通り、相続人全員で調停を行う裁判所について合意することを指します。相続人全員の合意さえあればよいので、被相続人の最後の住所地にしたり、各相続人の住所地の中間地点にしたりするなど、自由に定めることができます。
 ただ、相続人が多数にのぼる場合には、全員の意見が揃わないことも多くなるでしょう。また、管轄合意があることを示すため、事前に「管轄合意書」という書面を裁判所に提出しなければならず、注意が必要です。
 ②自庁処理とは、管轄違いの申立てを受けた裁判所が、事件を処理するために特に必要があると認めた場合に、移送せず自ら処理することをいいます。
 「事件を処理するために特に必要がある」とは、どのような場合を指すのか問題になりますが、経済的に困窮しており裁判所までの移動費を捻出できない身体が不自由で容易に移動できない等といった特別の事情が必要となると言われています。
 そのため、端に管轄裁判所が遠方にあるという理由だけでは、自庁処理してくれる可能性は低いでしょう。
 なお、反対に、管轄権のある裁判所に申し立てた場合でも、上記のような特別の事情があるときには、管轄権のない裁判所へ移送される場合があります。そのため、相手方の住所地に申し立てたが、被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所に移送されてしまうというケースも場合によってはありうるでしょう。

第3 管轄裁判所が遠方の場合

 申立人の住所地が東京都であるのに対し、相手方の住所地が沖縄県である場合、管轄合意ができない場合には、那覇家庭裁判所が管轄裁判所になってしまいます。また、仮に申立人が、東京家庭裁判所に調停を申し立てたとしても、特別な事情がない限り、自庁処理されることもないでしょう。
 遺産分割調停は、大体1カ月に1回のペースで行われるところ、原則出頭が要求されます。とはいっても、毎月沖縄まで行かなければならないとすると、当事者にとって重い負担となることは言うまでもありません。
 そこで、上記のような場合には、以下の方法を検討してみてください。

1 電話会議システムの利用

 遠方に住んでいて裁判所への出頭が事実上難しい場合、電話会議システムを用いて、調停を進めることが可能な場合があります。
 ただ、この方法を用いるかどうかは、裁判所の判断に委ねられているため、裁判所から、「初回だけは出頭してください」と依頼された場合には、出頭しなければ欠席扱いとなります。また、電話会議といっても、自宅の固定電話や携帯電話を使うことはできず、最寄りの家庭裁判所に出頭する必要があるため、注意が必要です。
 上記ケースで言えば、申立人は東京家庭裁判所に、相手方は那覇家庭裁判所にそれぞれ出頭した上で、東京家庭裁判所と那覇家庭裁判所との間で電話会議を行う形となります。

2 弁護士に依頼する

 遺産分割事件を弁護士に依頼するというのも一つの手でしょう。弁護士に依頼すれば、その弁護士が代理人として調停に出席することになります。
 そのため、上記例でいえば、沖縄県の法律事務所に依頼すれば、その弁護士が那覇家庭裁判所に代わりに出頭してくれます。当然弁護士費用はかかりますが、自身が出席する手間や労力、費用は抑えられますし、なにより希望に沿う形での解決が期待できるでしょう。

 

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