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相続土地国庫帰属制度の概要

1 はじめに

 相続や遺贈の場面では、意図せずに利用する予定のない不要な土地を引き継いでしまうこともあります。このような土地について、一定の場合に国庫に帰属させることを認める「相続土地国庫帰属制度」が、令和5年4月27日から開始されています。
 以下では、同制度の概要について、解説していきます。

 

2 相続土地国庫帰属制度の意義

(1) 相続放棄

 不要な土地の相続を回避する方法としては、従前から「相続放棄」という制度もあります。相続放棄は、相続人が、基本的には被相続人が亡くなったことを知った日から3カ月の期間内に、家庭裁判所に対して、「相続放棄の申述」をすることで、申述をした人がはじめから相続人ではなかったものとみなされるというものです。この結果、申述をした人は不要な土地を含む一切の遺産(借金も含みます)を承継しないことになります。

(2) 相続財産国庫帰属制度

 これに対し、相続財産国庫帰属制度は、相続人が遺産を相続や遺贈によって承継したことを前提に、遺産の中の特定の土地のみを国庫に帰属させることを認める制度です。相続放棄とは異なり、不要な土地以外の財産まで承継しないことになるものではありませんし、制度を利用できる期間の制限もありません。
 もっとも、相続放棄とは異なり、制度の対象となる土地は限定されていますし、国庫に帰属させるには負担金が必要となります。

 

3 国庫帰属までの流れ

(1) 法務局への承認申請

 相続や遺贈によって取得した土地について、国庫帰属を希望する相続人は、法務局に国庫帰属の申請をする必要があります。土地を共有している場合には、共有者全員で共同して申請する必要があります。
 国庫帰属の申請の際、承認申請書を提出するとともに、審査手数料として、土地一筆につき1万4000円を納付する必要があります。なお、収めた手数料は、審査の結果土地の国庫帰属が認められなかった場合でも返還されませんので、注意が必要です。
 承認申請書の記載に不備がある場合や、審査手数料を納付しない場合には、承認申請が却下されます。

(2) 要件該当性の審査

 申請が受理されると、法務局により、申請されている土地が国庫帰属の対象となるかどうかについて審査が行われます。
 相続財産国庫帰属制度では、国庫への帰属が認められない土地(ブラックリスト)が法律で定められています。例えば、建物が存在する土地、境界や権利関係が不明確な土地については承認申請をすること自体認められていません(申請しても却下されます)。
 また、崖地であったり、車両や樹木等の残置物があるような土地については、承認申請をすること自体は認められているものの、管理が困難であれば、不承認とされる可能性があります

(3) 事実の調査

 審査にあたって必要であれば、法務局の職員が現地調査や申請者等への事情聴取をしたり、書類の提出を求めたりすることがあります。
 申請者が、正当な理由なく事情聴取や書類提出への協力を拒否すると、承認申請が却下されてしまいます。

(4) 審査結果の通知

 審査が完了すると、法務局から審査の結果(申請が承認されるかどうか)が通知されます。承認の場合には、後述(5)の負担金の額も同時に通知されます。

(5) 負担金の納付(国庫への帰属)

 申請が承認されたときは、申請者は負担金を納付する必要があります。負担金を納付したときに、法律上の国庫帰属の効力が生じます。
 負担金の額は、標準的な管理費用10年分を基準に定めるとされており、具体的には、原則として20万円が必要とされています。もっとも、住宅街にある土地については面積に応じてより高額な負担金(200㎡で約80万円)が定められるなど、20万円では足りないケースも多く存在します。

 

4 最後に

 以上のように、国庫帰属が認められる土地は限定されており、帰属させることができる場合であっても、実際に手続を進めていくうえでは専門的な知見が不可欠といえます。
 もし、「遺産の中に不要な土地があり、相続手続が進まない」といったことでお困りなら、相続に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。