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代償分割はどのようにすれば良いか

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第1 代償分割とは

 遺産を分割する方法には、現物分割、換価分割、代償分割の3種類の方法があります。このうち、代償分割は、実際に遺産分割ではよく使う方法です。代償分割とは、一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させた上で、他の相続人に対する債務を負担する方法をいいます。例えば、相続人2人がいる場合、相続人Aが遺産である不動産を取得し、その代わりに相続人Aが相続人Bに、不動産の評価額の2分の1に相当するお金を支払って分割するような場合です。
 具体的にどのような方法で代償分割を行えばよいのでしょうか。

第2 代償分割が認められる場合

 代償分割が認められるのは、法律上は「特別の事情があると認めるとき」に認められますが(家事事件手続法195条)。この「特別の事情」があるときとは、次のような場合をいいます。

【代償分割が認められる「特別の事情」】
現物分割が不可能な場合
②現物分割をすると分割後の財産の経済的価値を著しく損なうため不適当な場合
③特定の遺産に対する特定の相続人の占有、利用状態を特に保護する必要がある場合
④共同相続人間に代償金支払いの方法によることについて争いがない場合

具体的には、一筆の土地の上に一戸建ての建物が建っているような場合、狭小の土地である場合、農業を継ぐ相続人に農地を取得させる場合などは、代償分割が認められる典型的な場合と言えます。

第3 資力があることが必要

 代償分割が認められるためには、代償金を支払うことになる相続人に、その代償金を支払うことができる資力があることが必要となります。代償金を支払う側に資力がない場合は、代償分割が認められないことがあります。
 代償金の支払能力があるかについては、預金通帳のコピーや残高証明書銀行の融資証明書などの提出を求めて確認することになります。

第4 財産を適切に評価する

 代償金の金額を決める際には、相続人の一部が取得することになる財産(不動産)などを適切に評価する必要があります。基本的には、評価額について相続人間で合意することを目指すことになりますが、例えば、不動産の評価方法については複数存在するので、一番自分にとって有利となる評価方法を主張する必要があります。(関連記事:不動産の評価方法について

第5 代償金の支払方法

 代償金の支払方法については、当事者の合意によりますが、後日に紛争にならないよう一括払いにすることが望ましいです。ただし、事情によっては、一定の期間まで支払いを待つ支払の猶予期間を設けたり、分割払いを認める場合もあります。例えば、別の不動産を売却して代償金の支払い資金を捻出しようとする場合は、その不動産を売却することができるまで支払いを猶予するということがあります。
 分割払いとする場合、回収の観点から、あまり長期の分割期間となるのは望ましくありません。しかし、不動産の代償分割の場合は、不動産の価値が高いために代償金の金額が大きくなる傾向がありますので、数年~10年程度の長期の分割払いとなる場合もあります。その場合は、その遺産である不動産に抵当権を設定してもらうなどして、確実に支払いを受けられる方法を取っておきます。
 代償金の支払いは、相続財産の中から支払う必要はなく、相続人の固有の財産(預貯金)で支払うことが可能です。遺産分割協議や調停での話し合いがまとまれば、金銭だけではなく、相続人固有の財産である不動産や株式の所有権を移転することをもって、代償金の支払いに代えることも可能です。

第6 代償分割をする場合の条項例

 代償分割を行う場合、遺産分割協議書などには、以下のような条項を入れるのが一般的です。

【代償分割をする際の条項例】
1 相続人Aは、別紙遺産目録1記載の土地及び同目録2記載の建物を取得する。
2 相続人Aは、相続人Bに対し、前項の遺産を取得した代償として、金〇万円を支払うこととし、これを令和〇年〇月〇日限り、相続人B名義の〇〇銀行〇〇支店の普通預金口座(口座番号〇〇〇〇)に振り込む方法により支払う。振込手数料は相続人Aの負担とする。

第7 代償分割のメリット

 代償分割の方法により遺産を分割するメリットとしては、特定の遺産を共有等にすることなく、相続人の一人が単独で取得することができるため、柔軟な遺産分割の実現が可能となることにあります。
 例えば、生前より被相続人の自宅に居住していた相続人が当該自宅を取得して引き続き居住し続けることが可能となります。その他にも、被相続人が行っていた事業を相続人のひとりが引き継ぐ場合には、当該相続人が事業用不動産を取得したり、当該事業会社の株式を取得したりすることも可能となります。
 このとき、相続人の一人が宅地等の不動産を取得する場合には、小規模宅地等の特例の適用を受け、50%~80%の減税を受けることができる可能性があることもメリットといえるでしょう。

第8 代償分割のデメリット 

 他方、代償分割の方法により遺産を分割するデメリットとしては、遺産の取得を希望する相続人に、代償金の支払が可能な程度の資力がなければ、代償分割を選択することができないことが挙げられます。また、代償金の額を算定するに際し、当該遺産の評価額について相続人間で争いとなる場合があることも、デメリットといえるでしょう。特に、不動産や非公開株式の評価については、大きな争いとなる場合があります。

 

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