遺産分割前に不動産を処分されるのを防ぎたい
第1 遺産分割前に不動産が処分されてしまうかもしれない
例えば、亡くなった父が不動産を所有しており、2人の子が相続することになった場合、相続人の1人が勝手に不動産を処分してしまう場合も考えられます。具体的には、その相続人の共有持分(2分の1)を第三者に売却したり、抵当権を設定したり、不動産を第三者に賃貸してしまうことが考えられます。
このように、相続人の1人が勝手に不動産を処分されてしまうおそれがある場合、これを事前に防ぐにはどのような方法を取れば良いのでしょうか。
第2 審判前の保全処分
このような場合、遺産分割の審判前の保全処分の申立てを行うことができます(家事事件手続法200条)。保全処分には、次のような種類があります。
①財産の管理者の選任及び財産の管理に関する事項の指示(同条1項)
②仮差押え、仮処分その他必要な保全処分(同条2項)
③遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させる仮分割の仮処分(同条3項)。
そして、具体例のように不動産が処分されそうな場合は、このうち②の不動産の処分禁止の仮処分を行うことが考えられます。
第3 不動産の処分禁止の仮処分を行うには
不動産の処分禁止の仮処分を行うと、不動産登記にその旨が記載されるため、売却、抵当権の設定や賃貸借契約をすることができなくなります。
不動産の処分禁止の仮処分を行うには、家庭裁判所に遺産分割審判または調停を申立てていることが必要となります。その上で、その家庭裁判所に「審判前の保全処分の申立書」を提出して行います。
また、この仮処分が認められるためには、①保全処分の内容の遺産分割がなされる蓋然性が高いことと、②保全の必要性が必要となります。
具体的に言えば、①については、遺産分割審判において仮処分を申立てた者がその不動産を取得する蓋然性があることが必要となります。
また、②については、上記の例で言えば、相続人の1人が金銭的に困っておりすぐにでも不動産を売却してしまいそうであるなどの具体的な事情が必要となります。
遺産分割前に遺産が処分されてしまうかもしれないとご不安な場合は、是非一度、法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
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