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貸金は遺産分割の対象となるか

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第1 貸金は遺産分割の対象とはならない

 例えば、被相続人が会社を経営しており、自分が経営する会社に対して金銭を貸し付けていた場合、その貸金債権は遺産分割の対象となるのでしょうか。 

 結論として、貸金債権は、遺産分割の対象とはなりません

 というのも貸金債権は、相続と同時に法定相続分の割合で分割されるため、遺産分割の対象とはならないのです。もっとも、相続人全員の同意があれば遺産分割の対象とすることができます。 

第2 具体例

 これを具体例で見てみましょう。
 被相続人(父)は、自分が経営していた株式会社に対して1200万円を貸し付けていました。このとき、父は会社に対して1200万円の貸金債権を有していることになります。 

 父が亡くなり、子ども3人が相続人である場合(法定相続分はそれぞれ3分の1)、上記の1200万円の貸金債権は相続により当然に分割され、3人の子がそれぞれ会社に対して400万円ずつの貸金債権を有することになります。 
 1200万円の貸金債権を3人で共有するのではなく、400万円の貸金債権に分割されて、それぞれ相続人が400万円の貸金債権を相続することになるのです。 

第3 当然に分割される債権とは

 では、貸金の他に、どのようなものが相続により当然に分割されるのでしょうか。これは可分債権と呼ばれるもので、具体例でいえば、貸金債権以外に、損害賠償請求権協同組合の出資金がこれに該当します。 

第4 預金について

 預金債権は、以前は、貸金債権と同様に相続により当然に分割され、遺産分割の対象とはならないとされていました。しかしながら、その後、平成28年の最高裁判所の判断で、預金債権は不可分債権であり遺産分割の対象となるとされました。
 このため、現在は、預金債権を含む金融資産(普通預金、通常貯金、定期預金、定期貯金、定期積金、投資信託など)は、相続により当然には分割されず、遺産分割の対象となるとされています。 

第5 貸金債権がある場合の実務上の処理

 遺産の中に貸金債権がある場合は、法定相続分の割合で当然に分割され、遺産分割の対象とはならないのですが、実際の遺産分割の場面ではどのように処理するのがよいでしょうか。

 先ほどの例で、被相続人(父)が生前に会社を経営しており、会社に対して1200万円の貸金債権を有していて、相続人が子ども3人の場合で考えてみます。

 貸金債権は分割されて相続されることになるため、父の死亡により、3人の子がそれぞれ会社に対して400万円の貸金債権を有するということになります。しかしながら、現在、会社には1200万円もの現金がなく、今すぐに会社から貸金を返してもらうのは難しいこともよくあります。

 このような場合、3人の相続人全員が合意すれば、1200万円の貸金債権を遺産分割の対象とすることができます。そして、例えば、3人の子のうち亡父の会社を継ぐことになった長男がこの1200万円の貸金債権を全部相続し、長男が残りの2人の相続人に対して代償金を支払ったり、残りの2人に貸金以外の他の財産(預金や不動産その他など)を相続してもらう、というような遺産分割方法を取ること考えられます。そうすることで、亡父の会社を継いだ長男は、1200万円の貸金の返済のことを考えずに会社を経営することができますし、残り2名の相続人もすぐに現金やその他の遺産を手にすることができます。

 このように遺産に貸金債権がある場合でも、相続人全員で合意をして遺産分割の対象とし、柔軟な解決を図るという方法を検討する方が良い場合もあります。
 遺産に貸金債権がある場合の相続でお悩みの場合も、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。

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