遺産分割調停中にやってはいけないこと
第1 遺産分割調停とは
遺産分割調停は、家庭裁判所において調停委員を交えて当事者双方が話合いを行い、話し合いで遺産分割問題について解決を図る手続です。
第三者である調停委員が関与するといっても、調停委員は中立的な立場で当事者双方の意見を仲介する役割であるため、あくまで当事者の話し合いによって解決を目指すことになります。調停においては、裁判所が一方的に結論を出すことはありません。
第2 遺産分割調停中にやってはいけないこと
遺産分割調停中にやってはいけないことは、どのようなことでしょうか。
1 遺産を勝手に処分する
遺産分割調停が成立するまでの間は、遺産は全相続人の共有の状態となります。
そのため、遺産である預金を勝手に出金したり、貴金属を売却処分するなど、共有となっている遺産を相続人が勝手に処分することは許されません。
2 発見した遺産を隠さない
遺産分割調停中に、新たな遺産を発見したということは珍しいことではありません。新しい遺産を発見した場合には、それを隠匿することは厳禁です。新たに発見した遺産については、調停の席できちんと報告することが必要です。
3 感情的にならない
遺産分割調停は、あくまでも当事者間の話し合いで遺産分割問題を解決する手続になります。例えば、昔から兄弟間の仲が悪かった、過去にもめ事があった等としても、感情的にならずに、遺産分割問題の解決のために冷静に話し合いを行うことが必要です。
第3 遺産分割調停に出席できない場合
遺産分割調停では、どの遺産を誰が取得するかについて話し合いを行い、相続人全員の合意が得られたときに調停が成立します。このため、相続人の1人が遺産分割調停に欠席すると調停は成立しません。それでは、遺産分割調停に出席できない場合は、どのように対応すれば良いのでしょうか。
1 電話会議の方法で参加する
例えば、調停が行われる家庭裁判所が遠方にあるため、出席することが難しいような場合、電話会議の方法で遺産分割調停に出席することが可能な場合があります(家事事件手続法285条1項、54条)。
家庭裁判所によっては、電話会議をする設備が十分に整っていない所もあるので、電話会議ができるか事前に裁判所に相談する必要があります。
家庭裁判所に行くのは難しいけれど、電話であれば調停に出席できるという場合は、家庭裁判所に連絡して電話で参加できないか相談してみてください。
2 弁護士に依頼する
遺産分割調停について弁護士に依頼すれば、弁護士に代わりに調停に出席してもらうことができます。
3 調停成立時のみ出席する
相続人が3名以上の場合で、例えば、自分は遺産分割調停で積極的に意見を言うつもりはなく、基本的に他の相続人に任せるというような場合、遺産分割調停が成立するときのみ出席するという方法があります。
調停が申し立てられた後、家庭裁判所に連絡をして「自分は遺産分割について特に希望がなく、他の相続人に任せている」旨を伝え、調停成立時のみ出席するという方法を取ることは可能です。
第4 遺産分割調停の一回目期日の前にやるべきこと
遺産分割調停においては、当事者が複数人いることから、自分が調停の席で話をする時間は限られています。1回の調停で10分~30分程度しか話ができないことも普通です。このため、調停の席で自分がどのような主張をするのかということを事前にきちんと整理しておくことが肝要です。
言いたいことがたくさんあるかもしれませんが、全てを伝えるのは無理であるので、遺産の分け方についての自分の基本的な希望や、法的に重要であると思われる論点を、第1回調停期日で主張することが望ましいでしょう。