遺言と葬儀(生前予約契約)
Contents
1 はじめに
みなさんのなかには、生前から葬儀内容や葬儀費用について、ご希望をお持ちの方もおられると思います。そのような希望を法的に実現するには、どのような方法が考えられるのでしょうか。
2 遺言と葬儀
まず、葬儀の主宰者を遺言により指定することが考えられます。
遺言によりできることとできないことは、法律で定められており、葬儀の主宰者を遺言によって指定することも可能です。
ただし、相続開始後、指定された者に主宰者としての義務を履行したくないといわれてしまうと強制することはできません。これは一定の贈与と引き替えにしていても(負担付遺贈)同じで、贈与はいらないから面倒なことはしたくない等と言われてしまうとどうしようもありません。
3 生前予約契約
そこで、葬儀業者との間で希望する葬儀内容について、生前予約契約を締結しておくことをお薦めします。ただし、生前予約契約を作成する際には、次の点に注意してください。
①葬儀内容及び葬儀費用の特定
葬儀の内容に不明な点があると、希望される葬儀内容がすべて実施できないおそれがあります。
そこで、生前から葬儀業者とよく打ち合わせをしていただき、契約書に添付する別紙に希望する葬儀内容を記載する等して、できる限り特定するようにしてください。
②民法653条との関係
次に、民法653条との関係が問題となります。民法653条は、委任が終了する事由として、「委任者又は受任者の死亡」を挙げていますので、この条文に鑑みれば、せっかく生前予約契約を締結しても、委任者である被相続人が死亡すると、同契約が終了するおそれがあります。
この点、最高裁は平成4年9月22日判決において、「民法653条が、委任者が死亡しても委任契約は終了しない旨の合意の効力を否定するものではない」との判断をしています。
ですので、生前予約契約を締結するときは、死後の契約存続条項(「民法653条の規定にかかわらず、本契約が甲の死後も効力を有する」等)も忘れずに記載するようにしましょう。
葬儀の法律問題にお悩みの方は、その分野に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ
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