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「相続の開始後に認知された者の価格の支払請求と遺産の価格算定の基準時」

(1)問題提起

遺産分割協議は、相続人全員で行わなければならず、相続人が一人でも欠けていたら当該遺産分割協議は無効となります。

他方、死亡した者に対しても認知(法律上の父子関係を形成するものであり、これにより認知された子は相続人となります。)を求める訴えを提起することができます(民法787条)。

したがって、被相続人の死亡後、数年が経過して初めて相続人となり、その頃には既に遺産分割協議が終了していることも十分にあります。

この場合、既に行われた遺産分割協議を無効にするのではなく、新たに相続人となった者の相続分に応じた価額の支払のみ請求できます(民法910条)。

この価額の請求をした場合に、遺産の価格はどの時点で計算するべきでしょうか。不動産や株式など、短期間で価値が増減する遺産がある場合に問題となります。

 

(2)事案の概要

Aは、平成18年10月7日に死亡しました。Aの妻であるBとその子共らは、平成19年6月25日にAの遺産について、遺産の分割協議を成立させました。

Xは、平成21年10月、XがAの子であることの認知を求める訴えを提起したところ、Xの請求を認容する判決が言い渡されました。

そこで、Xは平成23年5月6日、Aの子供らに対し、民法910条に基づく価額の支払を請求しました。Aの遺産の評価額は、最大で10億円近く変動がありました。

 

(3)本判決

「相続の開始後認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は、価額の支払を請求したときであると解するのが相当である」と判断し、平成23年5月6日を遺産の評価基準時としました。

 

(4)本判決のポイント

民法910条の価額請求権における遺産の価額算定の基準時について、同請求をした時点と明言したことが大きなポイントです。